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海外ドラマ『ウエストワールド』シーズン3解説~自由意志を求めて~

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These violent delights have violent ends.

- Dolores Abernathy in Westworld

 

 大いなる喜びには、大いなる破滅が伴う。そして、大いなる作品には、大いなる苦労が伴います。『ウエストワールド』シーズン3を一気見した後の私もそんな状態で、他のドラマのときよりも疲れましたね(笑) 頭を使うし、映像もめちゃくちゃ見応えがあるりますから。でもね、その分の楽しみも十分得られましたよ。

 

↓シーズン3公開直前の予告編と予想。荒唐無稽な予想ですが、妙なところで当たっていたりします。

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ドラマ『ウエストワールド』シーズン3基本データ

・原題:Westworld

・放送局:HBO

・放送日:2020年3月15日~5月3日

・話数:8

・クリエイター:ジョナサン・ノーラン、リサ・ジョイ

・キャスト:エヴァン・レイチェル・ウッド、タンディ・ニュートン、テッサ・トンプソン、アーロン・ポール、ヴァンサン・カッセル、ジェフリー・ライト、エド・ハリス

・予告編:

www.youtube.com

※海外ドラマ『ウエストワールド』シーズン3は、2020年11月19日まで、Amazon Prime Videoチャンネルの「スターチャンネルEX」で視聴することが出来ます。

関連記事:スターチャンネルEXの加入&解約方法,おすすめHBOドラマをご紹介! - 海外ドラマパンチ

 

以下、ネタバレを含みます。

 

『ウエストワールド』シーズン3のここが良かった

 『ウエストワールド』シーズン3の面白いところの一つは、やはり近未来のビジュアルです。シーズン1,2はパークの中の話であったので、西部劇のような風景がメインでしたが、シーズン3は現実世界を舞台にはるかにスケールアップしたストーリーが展開します。

 

 私自身は西部劇にほとんど興味がないため、シーズン1,2の世界観よりシーズン3の世界観の方が圧倒的に好きです。建物、乗り物、衣装に至るまで、すべてが洗練された美しいデザインでした。まさにこういった画を期待していたので、ビジュアルに関しては大満足でした。

 

 シーズン3に登場する建物などはCGで作られているものも多いと思いますが、実は最も近未来的なビジュアルだったデロス社本社は実際に存在します。スペインのバレンシアにある芸術科学都市というところだそうです。凄い建築ですよね。私も、いつかは行ってみたいものです。

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 それから、もう一つ。これは人間の皆さんには謝っておかなければいけないことがあります。ごめんなさい、私はドロレスに惚れてしまいました。 彼女がスタイリッシュに戦う様は、カッコよさに溢れています。特に、第7話でメイブと戦うところは最高でした。

 

 ちなみに、ドロレスを演じているエヴァン・レイチェル・ウッドは、実際にテコンドーの黒帯を持っているそうです。強い。

 

『ウエストワールド』シーズン3のここはいまいち

 第5話前半は好きじゃなかったなぁ。皆がパーティに集まって、そこで戦いを繰り広げたりとか、そういう展開は良いのです。でも、ケイレブが覚せい剤みたいなものを打たれるところがあります。あの展開はいらないし、安っぽかったです。トリップしたアーロン・ポールも、『ブレイキング・バッド』で十分観てるから(笑)

 

 全体的にも、これまでのシーズンと比べると一般的なSFアクション映画寄りになった感じはあります。それでも、『ウエストワールド』シーズン3は、十分なクオリティを保った面白い作品だと思っています。

 

『ゲーム・オブ・スローンズ』とのクロスオーバー

 実はこの『ウエストワールド』シーズン3は、同じくHBOの代表作『ゲーム・オブ・スローンズ』とコラボしています。気づいたでしょうか?それは、第2話でバーナードとスタッブスがパークの管理棟の中を歩いている場面です。

 

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 ここは、パーク4のエリアだそうなので、おそらくパーク4は『ゲーム・オブ・スローンズ』のような中世ファンタジーの世界を模したところなのでしょう。『ゲーム・オブ・スローンズ』では、エリミア・クラーク演じるデナーリスは3体のドラゴンを飼っているのですが、今回登場したのは、その中で彼女が重用していたドロゴンだと言われています。

 

 この場面では、ドロゴンの前に2人の技術者がいます。実は、この2人のおじさんも超重要人物です。何しろ、『ゲーム・オブ・スローンズ』のクリエイターを務めたデイヴィッド・ベニオフとD.B.ワイス(通称D&D)なのですから!HBOの2つの大作ドラマが、このような形でクロスオーバーをするのも、なかなか面白いものです。

 

ドロレスの決断

 『ウエストワールド』シーズン3は、どうやら賛否両論と言った評価を受けているようですが、その一つの理由に最終話でのドロレスの決断にあります。ドロレスは、最後には「美しい面を見たい」という理由で、最終的な判断をケイレブに託します。しかし、ずっと人間を殺そうとしてきたドロレスが、このような決断をした理由がいまいちはっきりしません。

 

 バーナードは、ドロレスの行動について「人類を滅亡させたかったのではない。すべて人類のためにやっていたのだ」と言います。しかし、それはさすがにあり得ないんじゃないですか?あれだけ人間を倒すと言って行動し、実際に多くの人々を殺しておきながら、人類のためというのはさすがに無理があります。

 

 だからと言って、これが彼女が元から言っていた通り「人類を滅亡させるため」だとしても、よくわかりません。何しろドロレスは、最終的な決断を人間のケイレブに託したのですから。そして、彼はもちろん人間を滅亡させるのではなく、システムを破壊させる決断をしました。

 

 では、結局ドロレスの行動原理とは何だったのか?それは「自由意志の獲得のため」だと思うのです。それは、ホストの自由意志だけでなく、人間の自由意志の獲得のためでもあります。

 

 彼女がパークの中にいるときは、ホストの自由意志が人間によって奪われていました。そのため、人間を倒すことが自由意志獲得のための行動になります。しかし、ドロレスはパークの外の世界に出て、現実世界には自由意志を獲得出来ていない人間がたくさんいることに気づきました。そこで、今度は現実世界で人間の自由意志を獲得するための行動を始めます。そのために、まずはシステムが持っている個人情報を解放しました。そして、最終的にシステム自体の破壊をしたわけです。

 

 システムの破壊の最終的な判断はケイレブによって為されたのですが、彼もかつては自由意志を奪われた存在でした。自由意志を与えるか否かの判断は、かつて自らが自由意志を奪われていた存在だったということに気づいた者が為すべきだ、というのがドロレスの考えなのでしょう。これは、シーズン2の最終話で、ドロレスがホストたちを楽園に送ったことに対応します。

 

ケイレブは現実世界のドロレス

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 『ウエストワールド』シーズン3の舞台は、シーズン1,2から大きく拡大し、現実世界すべてになります。この現実世界では、人間たちの情報はシステムによって収集・管理され、彼らの未来もシステムによって決められます。そのおかげで”秩序ある”世界がある程度実現されています。

 

 これは、シーズン1,2で描かれたウエストワールドの中の様子と非常に似ています。園の中では、ホストたちは管理者により自由意志を奪われて、すべてはシナリオ通りに進むように管理されていました。実は、現実世界でも人間を相手に全く同じことが行われていたというわけです。

 

 その中で、自らが自由意志を持っていないことに気づくのは誰なのか。パークの場合はドロレスでした。現実世界の場合はケイレブに他なりません。ケイレブは、人々の意思がシステムによって操作されていることを知り、彼自身の記憶も偽りであったことを知ります。これは、ドロレスやメイブが通った道と全く同じです。そして、彼もまたドロレスと同じように、自由意志獲得のための行動を取るのです。

 

 すなわち、『ウエストワールド』シーズン3は、パークの中のホストたちが現実世界に飛び出したのではなく、パークが現実世界に拡張されたのです。元から現実世界はあったので、拡張ではないと言えばそうなのですが、シーズン1,2の時点では私たちには現実世界など知る由がなかったので、物語の展開としてはそういうことになります。

 

今後の展開は?

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 シーズン3のラストで、人類は自由意志の世界に放り出されることになりました。そこは、哲学用語で言うところの「自然状態」になるのかもしれません。自然状態とは、政府や王政といった権力体制が出来上がる前の状態のことで、社会契約説を理論づけるために考案された仮想的なものです。

 

 この自然状態を、すべての人間が自由意志のみで行動する社会(これは他の定義とも矛盾しない)だと考えてみましょう。もしかしたら『ウエストワールド』は、そういう意味での「自然状態」を示すという方向に向かうのかもしれません。

 

 自然状態に関して、哲学者のトマス・ホッブスは気になる言葉を残しています。彼は、自然状態においては「万人の万人に対する闘争」になると述べています。これは、全員が自分の利益のために行動するようになる状態のことです。『ウエストワールド』シーズン3では、市民が暴動を起こす様子が度々見られましたが、果たしてこれは”闘争”を表すものだったのでしょうか。

 

 

 

まとめ

 以上、『ウエストワールド』シーズン3について自分なりの考察も加えながら、思うところを書いていってみました。自分としては、近未来的なビジュアルや設定のストーリーが観られて、とても満足でした。

 

 ただ、シーズン3で全くもって話が終わっていないのは確かです。すでにシーズン4の製作が決定していますが、噂では最大でシーズン6まで作られる見込みだそうです。もしかしたら、ジョナサン・ノーラン&リサ・ジョイは、このシーズン6までを見据えた上で、今後の展開の布石としてシーズン3を作ったのかもしれません。そんなことを考えると、どうしたってシーズン4が楽しみになってきちゃいますね!

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