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海外ドラマ『ウォッチメン』~コミック版必須、怒涛のSFミステリー~

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People who wear masks are driven by trauma.

- Laurie Blake in Watchmen
 

 アラン・ムーア原作の傑作コミック『ウォッチメン』の後日譚を、完全オリジナルストーリーでHBOがドラマ化!やってくれましたよ。コミック版「ウォッチメン」ファンの方は必見です。ただ、コミックを読んでいないとかなり難しいかも。

 

 

 

 

ドラマ『ウォッチメン』基本データ

・原題:Watchmen

・放送局:HBO

・放送日:2019年10月20日~12月15日

・話数:8

・一話あたりの長さ:52~67分

・クリエイター:デイモン・リンデロフ(『LOST』)

・キャスト:レジーナ・キングドン・ジョンソンジェレミー・アイアンズ

・あらすじ:

 舞台は2019年のオクラホマ州タルサ。34年前にエイドリアン・ヴェイド(オジマンディアス)により核戦争の危機を免れた世界だったが、タルサではロールシャッハのマスクを着けた白人至上主義団体「第七機兵隊」が警官殺しをしていた。

・予告編:

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鑑賞前の方へ

 今回のドラマ版『ウォッチメン』は、コミック「ウォッチメン」のその後の世界が描かれます。このアラン・ムーアによるコミック版は、アメコミの中でも非常に評価が高い作品です。2009年にはザック・スナイダー監督により映画化もされましたが、このドラマ版がもとにしているのはあくまでもコミックの方です。

 

 映画版だけをご覧になったことがあるという方も多いかもしれませんが、コミック版とはいくつか異なる点もあるので、コミックを読むか、あるいは軽く予習をしておくと良いかもしれません。

 

 第5話まではそうでもないけど……という感想も見受けられますが、コミックも読んだ私自身は第1話からめちゃくちゃ面白かった!コミックへのオマージがたくさんあったし、謎が深まる展開も好き。もちろん第6話からの怒涛の展開もぶちアガります!ネタバレ厳禁なので、これからご覧になる方は、このドラマ版の情報はできるだけ入れないことをおすすめします。

 

ウォッチメン愛が凄い! 

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 今回のドラマ版の何が凄いって、ほぼコミックのイメージ通りの世界観が舞台になっているんですよね。衣装とか黄色を基調としたデザインもそうですし、ドラマ内に別のドラマが挿入されているのもそうです(コミックでは、海賊のコミックが断片的に挿入されていた)。複数の人物の視点から物語が語られてあり、それぞれの過去が徐々に明かされていく展開もそう。そして、またオジマンディアスが何かしてるんです(笑)

 

 ザック・スナイダーの映画版は、あれはあれでカッコいいのですが、あくまでもザック・スナイダー的なカッコよさなのです。映画単体で観れば面白いのですが、原作の世界観とは微妙に違和感があったりします。でも、このドラマ版はほぼ完璧に原作の世界観に則っているので、原作ファンにはそれだけでもたまらない作品になっています。


追記:先日、ドラマ『ウォッチメン』のクリエイターのデイモン・リンデロフがコミック『ウォッチメン』で出会った思い出を語るアニメーションが公開されました。これも、とても『ウォッチメン』愛が溢れる作りになっています。

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 実は、このアニメ自体にもウォッチメンへのオマージュがあります。動画の3:55頃の少年が脳ミソになってしまうところは、オスターマン博士がDr.マンハッタンになる事故の場面と同じです。3:32に父親がベッドの端に腰かけている場面は、コメディアンがモーロックの寝室に押しかける場面と全く同じです。デイモン・リンデロフが『ウォッチメン』が大好きであることが伝わってきます。

 

ドラマ『ウォッチメン』感想(ネタバレあり)

 おぉ⁉前半は、とにかく謎や伏線が散りばめられてばかりで、何をやっているかよくわからないです。でも、その謎が面白いんですよ。謎の老人(ウィル)がどうやって署長を吊るしたのかとか、そもそもその老人は誰なのか、あのベトナム人女性は何を企んでいるのか、そしてオジマンディアスは一体何をしているのか?ミステリー的な面白さはこの時点ですでに満点

 

 第6話までは、アメリカにおける人種差別問題がメインで扱われていきます。特に第6話のフーデッド・ジャスティスのエピソードは素晴らしい。フーデット・ジャスティスは、コミックでも顔を見せることがなかったヒーローで、実は黒人だったというのはドラマ版独自の解釈なのでしょう。実際にあったタルサでの黒人虐殺事件も取り込んで、警察にいてもミニッツメンにいても黒人であるためにやりたいことが出来ないというやるさなさを感じさせられるエピソードでした。

 

 第7~9話は衝撃の展開が続き、怒涛の伏線回収になります。様々な謎の背景にはDr.マンハッタンがいたのですね。私が一番好きなトリックは、オジマンディアスのところです。第1話からオジマンディアスは何か企んでいるような雰囲気はあるのですが、その割にちょっと幼稚なことをしています(残酷だけどね)。そもそも今頃こんな城に住んでいて、執事がいるというのも違和感があります。でも、実は彼はDr.マンハッタンによりエウロパに送られ、そこで孤独に過ごしていたのです。もはや地球ではないという衝撃が凄い。想像をはるかに超えてくる展開でした。

 

 ちなみに、オジマンディアスのメイドをしているクルックシャンクス嬢を演じているのは『刑事モース』のサースデイのお嬢さんも演じているサラ・ヴィッカーズでした。ご主人様の誕生日を称える歌を歌っているのが可愛いですね。

 

 ドラマ『ウォッチメン』の後半では、それまでの伏線が気持ちよいぐらいに回収されていきます。SFミステリーとしては、『ウエストワールド』よりも気持ち良いぐらいです。

 

 ただ、少し気になったのが人種差別というテーマの追及が6話で終わってしまっているところ。第7~9話では、人種差別集団のサイクロプスの面々が皆殺しにされるだけで、人種差別に対する深い追及はされません。第6話が素晴らしいので、そこでそのテーマは完結したということにしても良いのですが、それにしても一貫性を欠くような印象はありました。

 

 第7話からは、意外とエイバーとDr.マンハッタンの恋の話でした。エイバーのために、Dr.マンハッタンはすべてを投げ出してまで一緒にいようと思ったわけですから、Dr.マンハッタンも変わりましたよね。歴代ガールフレンドに対する仕打ちとは大違いです(笑)

 

 今回のドラマ版『ウォッチメン』に関して一つ確かなのは、音楽が最高だということです。音楽を担当しているのは、トレント・レズナーアッティカス・ロズという人なのですが、過去には映画『ソーシャル・ネットワーク』の音楽でアカデミー賞を受賞しています。他にも、『ゴーン・ガール』や『ドラゴンタトゥーの女』などデヴィッド・フィンチャー監督の映画音楽などを多数手掛けています。今回の音楽もWatch(時計)をイメージしたカッコいい曲になっています。

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 コミックの『ウォッチメン』と言えば、合間に挿入された数々の参考文献が特徴的でしたが、実は今回のドラマ版『ウォッチメン』にもあります。ドラマでは、ヒーロー好きのピーティー捜査官がという人物が登場しました。彼がまとめた、ヒーローに関する資料が「Peteypedia」という名前で、HBO公式サイトの中にあります。全て英語で長文なので大変ですが、気になる方はぜひ読んでみてください。以下のリンクからも行けます。

Peteypedia | HBO

 

ドラマ『ウォッチメン』まとめ

 以上、海外ドラマ『ウォッチメン』の感想を書いてきました。コミック「ウォッチメン」を読んでいないと難しいので、日本人にはちょっとハードルが高いドラマかもしれません。ですが、コミックを知っている方にとっては、そのデザイン性や原作とのリンクが楽しめる作品になっていると思います。

 

 なお、ドラマ『ウォッチメン』は現在スターチャンネル及びAmazon Prime Video(アマプラ)の「スターチャンネルEX」チャンネルで視聴できるほか、6月からはブルーレイ&DVDも発売される予定です。

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