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時間は螺旋に渦を巻く『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』シーズン3

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General rule is, everybody's lying. Period.
- Wayne Hays in True Detective season 3

 

 これまで海外ドラマはたくさん観てきましたが、その中でも私が一番好きなのが『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』シーズン1です。今回は、その『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』のシーズン3の考察・解説と感想です。

※『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』シーズン3は、『トゥルー・ディテクティブ 猟奇犯罪捜査』というタイトルになっている場合もあります。

 

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『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』シーズン3基本データ

・原題:True Detective

・放送局:HBO

・放送日:2019年1月13日~2月24日

・話数:8

・クリエイター:ニック・ピゾラット

・キャスト:マハーシャラ・アリ、カーメン・イジョゴ、スティーヴン・ドーフ

・あらすじ:

 1980年に、パーセル家の2人の子供が失踪した。刑事のウェイン・ヘイズは、相棒のローランドとともに、事件の捜査に当たる。

・予告編:

www.youtube.com

※『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』シーズン3は、Amazonプライムビデオで配信中。DVD等では『トゥルー・ディテクティブ 猟奇犯罪捜査』となっています。

 

ざっくりあらすじ(ネタバレ)

 パーセル事件は、1980年にウィルジュリーの兄妹が失踪したことから始まります。ほどなくしてウィルの死体が見つかります。しかし、有力な容疑者を掴むことができないまま、1980年の捜査は”ゴミ男”ことブレット・ウッドワードの死をもって終了します。

 

 1990年には、ジュリーの指紋が発見され、再捜査が始まります。しかし、このの捜査もまた、兄妹の父親であるトム・パーセルの死をもって終了します。実は、このときにウェインは富豪のホイト家が事件に関わっていることに気づいたのですが、ホイトからの圧力により、それ以上の追及をしませんでした。

 

 2015年では、ウェインは事件についてのインタビューを受けています。その中で、記者がいくつかの新情報を持っていることを知り、ウェインは再び事件の闇に引き戻されます。このときのウェインは記憶障害を患っていたので、ずっと秘密にし続けていたホイトと事件の関連を忘れてしまっていました。

 

 2015年の再調査の結果、ホイトの娘のイザベルが、自分の娘を失ったショックからジュリーを誘拐したことが明らかになります。そのときに、ウィルは転んだはずみで頭を打ってしまったのでした。長年イザベルに監禁されていたジュリーでしたが、隻眼のワッツの手引きで脱出を果たしたのでした。

 

時間は螺旋状

 
 
 
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 『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』シーズン3の最たる特徴は、3つの時間軸が入り乱れる構造にあります。シーズン1でも、主に3つの時間軸がありましたが、あくまでも現代パートで過去の事件を思い出し、後半では現代パートでの捜査がメインでした。

 

  一方、シーズン3は1980年、1990年、2015年という3つの時間軸を常に行き来しながら進みます。いわば、螺旋状に時を行きつ戻りつしながら話が進んでいくのです。これは、シーズン1のプロットをさらに発展させたものと言えます。

 

 このプロットは、『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』ならではのものであり、画期的なものだと私は思っています。『トゥルー・ディテクティブ』以外にもインタビュー形式で物語が進んでいく映画やドラマはあります。しかし、それらは前半が回想で、後半が現代パートとなるものがほとんどです(自分は、なぜか映画『アトミック・ブロンド』が最初に思い浮かんだのですが、他にも色々あるでしょう)。過去パートでも現代パートでも、同時進行で物語が進んでいくものは『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』ぐらいではないでしょうか。

 

 この螺旋状のプロットにすると、登場人物と視聴者の間では、明らかに情報格差が生じます。なぜなら、現代パートの人々は、過去の事件がどのように終わったかを当然知っているからです。観ている方としては、言葉の端々から事件の顛末がぼんやりとわかるものの(過去の捜査が途中で切り上げられたことなど)、詳細は全くわかりません。その部分は、過去パートで徐々に明かされていくことになります。これには、まるでジグソーパズルのピースが埋まっていくような面白さがあります。

 

ミステリーとしての完成度が高い

 シーズン3は、他のシーズンよりもミステリーとしての完成度が上がっています。ホイトの名前は、兄妹の母親のルーシーがかつて働いていた場所の名前として、序盤からはっきり出てきます。後半ではあまり言及されませんでしたが、兄妹が以前から父親に内緒で誰かのところへ通っていたことへの説明も、この真相で十分理解できます。

 

 自分が一番腑に落ちたところは、脅迫状の件。あの脅迫状は、母親のルーシーが、トムを安心させるために書いたことが途中で明かされるのですが、これが自分にはずっと引っかかっていたのです。子供が消えたことに対する回復が早すぎるし、何よりとても回りくどいように思えたのです。しかし、ルーシーがホイト側からジュリーを預かっているという説明を受け、ジュリーが安全であることを知っていたなら、これは納得できる行動です。

 

 おそらく、他にも伏線は多数あるでしょう。『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』シーズン3は、これまではなかったミステリーとしての面白さが加わったシーズンでもありました。

  

刑事の物語

 
 
 
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 『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』は、どのシーズンでも、その主眼は事件そのものではなく刑事の生き方にあります。シーズン3では、ウェイン・ヘイズ刑事の生き方が描かれます。彼は、1980年にパーセル事件を担当してから、この事件に人生を振り回されることになります。

 

 ウェインは、1980年の捜査の後に広報課に左遷されました。真実を追究するtrue detectiveである彼にとっては、適当に事件を解決したことにしようとする警察や、それに従うローランドのことが我慢ならないのです。しかし、1990年にはホイトからは家族を脅されたために、捜査を修了することに仕方なく従ってます。ウェインは、刑事である以前に家庭を持つ人間であるので、このような決断をせざるを得なかったのでしょう。

 

 だが、この男、警察を辞めたってtrue detectiveであることは変わりません。2015年に新たな情報を得てから、再び事件の捜査を始めます。このときに、隻眼の男に辿り着いたことで、ようやく事件の全貌が明かされたと思われたのですが、真実にはもう一歩先がありました。ジュリーはまだ生きているというのです。

 

 ウェインはこのことに気づき、ジュリーに会いに行くのですが、彼女の家に着いた瞬間にそのことを忘れてしまいます。辛い。もう一歩なのに……。でも、ウェイン自身にとっては、もう事件は解決されているので、何も問題はないのかもしれません。彼は、久しぶりに娘との再会を果たし、孫たちと遊びます。ようやくパーセル事件から解放されて。

 

 でも、妻のアメリアと出会ったのはこの事件がきっかけだし、ローランドと再会するきっかけも2015年の事件の再調査なので、一概に解放されたとは言えないのかもしれません。事件の闇から解放されたと言うのが正しいのでしょうか。

 

 最終話の最後には、ウェインがベトナム戦争に従軍しているシーンが映ります。このシーンで、ウェインは暗い森の中に入っていきます。これは、ウェインが(たとえそれが危険だと知りながらも)闇に分け入っていく人間だということを象徴しているのでしょうか。

 

 

 

まとめ

 『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』シーズン3は、これまで以上に静かな物語ではあるものの、じっくりとウェインの生き方が見られるシーズンでした。個人的には、ミステリー的な面白さにも惹かれましたね。そして、35歳差を演じ分けるマハーシャラ・アリの演技力には恐れ入ります。1980年と1990年パートもさることながら、2015年パートでも違和感なく演じてしまうところに、彼の底知れなさを感じます。

 

 さて、これで私も『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』の最新シーズンに追いついてしまったのですが、やはり気になるのはシーズン4の行方です。今のところ、『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』シーズン4についての情報は何もないのですが、クリエイターのニック・ピゾラットは「アイデアがある」というようなことも言っています。あまり急がなくても良いので、ぜひニック・ピゾラットにはじっくりと脚本を練ってもらい、シーズン4を製作してほしいものです。

 

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