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ドラマ『セヴェランス』シーズン1感想|ワーク・ライフ・バランスの究極の解決法

Every time you find yourself here, it's because you chose to come back. 

- Mark S., Severance season 1 

 

 働き方改革してますか? 私生活とキャリアをともに充実させるために、近年、ワーク・ライフ・バランスは重要視されています。ルーモン社は、この課題の究極の解決法を開発しました。それが、セヴェランスです。今回は、近未来の新たな働き方を模索するApple TV+のドラマ『セヴェランス』のネタバレあらすじと感想をまとめていきます。

 

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基本データ

  • 原題:Severance
  • 配信:Apple TV+
  • 公開日:2022年2月18日~4月8日
  • 話数:9
  • 脚本:ダン・エリクソン
  • 監督:ベン・スティラー、イーファ・マッカードル
  • キャスト:アダム・スコット、ジョン・タトゥーロ、ブリット・ロウワー、ザック・チェリー、パトリシア・アークエット、クリストファー・ウォーケン、トラメル・ティルマン

予告編

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 Apple TV+のオリジナルドラマ『セヴェランス』は、すでにシーズン2の製作が決定しています。2022年のエミー賞では、作品賞を含む14ノミネートを果たし、タイトルデザイン賞と楽曲賞の2部門で受賞しました。

 

 Apple TV+は初回7日間無料、その後は月額900円(税込)。『セヴェランス』を含め、Apple TV+で配信されている作品は、すべてここでしか観ることができない独占配信作品です。

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ネタバレあらすじ

 マーク・スカウト(アダム・スコット)は、ルーモン社のマクロデータ改良部MDR)で働いていた。この部署では機密情報を扱っているため、社員は全員セヴェランス手術を受けていた。この手術を受けた人は、職場にいる間は職場外での記憶にアクセスすることができず、職場外にいるときは職場での記憶にアクセスできないようになっていた。その結果、社員は職場内での人格(インニー)と職場外での人格(アウティ)に分裂していた。

 

 マークの自宅に、ピーティ(ユル・ヴァスケス)と名乗る男がやってくる。彼は、かつてのマークの同僚だった。ピーティは、再結合手術を受けたため、職場外にいても職場内の記憶にアクセスできるようになっていた。マークにルーモンの危険な仕事について警告した後、副作用によって死亡してしまった。

 

 MDRには、新たにヘリ―(ブリット・ロウワー)が配属された。ヘリーは、全く職場に馴染むことができず、何度も自分のアウティに退職の意思を伝えようとしていた。しかし、ヘリーのアウティは、決して退職を認めることはなかった。ヘリーは、エレベーターで自殺を図るが、すんでのところで救助された。最年長のアーヴィング(ジョン・タトゥーロ)は、光学デザイン部(O&D)のバート(クリストファー・ウォーケン)と親密になっていた。

 

 ディラン(ザック・チェリー)は、自宅でインニーの人格を起動させられ、自分に息子がいることを知った。それを聞いたMDRの社員たちは、自分たちで同じことをやることを思いついた。ディランが警備室に残り、他の3人はそれぞれの場所でインニーの人格を起動させられ、知人にできる限りルーモン内部の状況を伝えるという計画だった。

 

 マークは、妹のデヴォン(ジェン・チュロック)の家で開かれた朗読会で目覚めた。妹の夫のリッケン(マイケル・チェルナス)は、マークが社内で隠れた読んでいた自己啓発本の作者だった。朗読会には、マークの隣人であり、職場のボスであるコベル(パトリシア・アークエット)もいた。コベルは、その日に上層部からクビを通達されたばかりだった。

 

 アーヴィングは自宅で一人で目覚め、バートの家に向かうが、バートはすでにパートナーと幸せに暮らしていた。コベルは、ヘリーのもとに急行する。ヘリーのアウティは、ヘレナ・イーガンであり、ルーモン社CEOの娘だった。ヘレナはセヴェランスを実際に体験している推進派としてスピーチを行う予定だったが、インニーのヘリーは危険性を訴えようとする。マークは、職場で出会ったケイシー(ディーチェン・ラックマン)が亡くなったはずの妻であることに気づき、妹に知らせようとした。

 

 

セヴェランスとは

 セヴェランス手術とは、職場内の記憶と職場外での記憶を完全に分離する処置のことです。この手術をすると、職場外にいるときには、職場内の記憶にアクセスできないので、会社としては機密情報の漏洩を防ぐことができます。社員自身も、家に帰ってから仕事の失敗を悩むことがなくなります。逆に、職場内にいるときは、職場外での出来事に気を取られずに仕事に集中することができます。メリットだけ聞けば、確かにこれはワーク・ライフ・バランスの究極の解決法です。

 

 アウティにとっては、この方法は良い選択肢の一つです。しかし、問題はインニーです。インニーは、セヴェランスした後に生まれた新たな人格です。インニーは職場にしか存在せず、記憶はすべて職場の中で与えられたものだけ。読んだことがある本は、ルーモン社の手引書のみです。そのため、インニーの思想は完全にルーモン社の理念と一致します。ヘリー以外のインニーがこれまで会社に反抗したことがなく、驚くほど従順に働いているのは、そのためです。

 

 

 セヴェランス区画では、文字の持ち込みや持ち出しが厳禁なので、インニーはアウティに自分の意思を伝えることもできません。退職の意思などといった、どうしても伝えたいことがあるときには、ビデオを撮って送ります。ただし、アウティが退職願を退けてしまったら、退職することはできません。セヴェランスは、基本的にアウティにとっては便利で、インニーにとっては苦痛なものなので、残念ながらインニーが出した退職願をアウティが承認してくれないこともあります。インニーは、会社とアウティの奴隷のような存在になってしまっています。

 

 ちなみに、セヴェランス手術は架空のものです。『セヴェランス』は、Netflixの『ブラック・ミラー』みたいな近未来SF(サイエンス・フィクション)というわけですね。特定の装置を用いることで、実際に記憶を2つに分離することが可能かどうかは、脳科学者に訊いてみてください。

 

ネタバレ感想

 職場と日常の記憶を完全に切り離す。この設定を聞いた世の中の脚本家たちは、歯ぎしりをしたと思います。悔しすぎて。シンプルなのに誰も思いついたことがなく、ストーリーを広げられる余地が十分にあって、しかも社会風刺的です。『セヴェランス』はこの設定を完璧に生かし、ユーモアも加えた、素晴らしいドラマになっています。

 

2つの人格

 記憶が分裂するだけで、人格も分裂してしまうことに、この物語のミソはあります。人格というものは、その人の過去の経験から形作られるので、異なる記憶からは異なる人格ができるというわけです。マークは、職場外では妻の死による悲しみを抱えていますが、職場内では愉快な社員です。

 

 

  職場内外での人格が180度異なっていたのがヘリー。アウティの正体は、シーズン1最終話でようやく明かされます。ヘリーは主人公の一人であるにも関わらず、それまでヘリーのアウティについては何一つ明かされていなかったので、何かあるのではないかと勘繰ってはいました。でも、これは想像外。CEOの娘、次期CEOだそうです。ルーモンは最先端企業のように見えましたが、意外と家族経営なんですね。

 

 ルーモンのような大企業なら、セヴェランス手術のような都合の悪いことは下っ端にだけやらせて、上層部は全く関与しないのかと思っていましたが、そうでもありませんでした。ヘレナ=ヘリーは、自分から積極的にセヴェランス手術を受けています。社員たちも”家族”なので、自分がやりたくないようなことを社員にやらせるわけがないのだと言っていました。

 

 ところが、ヘリーのインニーは、フロアの中でも最もセヴェランに反抗的な社員です。ヘレナがセヴェランス推進派なのは、子どもの頃からそのように教えられて育ってきたからですが、ヘリーにはそんな知識はありません。そのため、実際にインニーを体験して、セヴェランスを憎んでいます。

 

ルーモンはどんな企業?

 ところで、ルーモンとは、いったいどんな会社なのでしょう? そして、マクロデータ改良部がやっていることはいったい何なのでしょう? 怖い数字を分類するとか、やっていることがさっぱりわかりません。マークの職場の元友人のピーティは、ルーモンは何か怪しいことをやっていると匂わせて死んでしまいました。

 

 ヒントは、いくつかあります。まず、ヤギです。セヴェランス区画には、ヤギを育てている部署があります。また、ルーモンのサービスは、人を喜ばせるものです。笑顔の歯の写真がずらっと並んでいましたから。そして、ルーモン社のサービスの内容は、セヴェランスと強く結びついています。そうでなければ、ヘレナがわざわざセヴェランスを推し進めるスピーチなど行いません。

 

 一つの仮説として、ルーモンはセヴェランス手術を人々に提供する企業だと考えられます。出産の痛みを味わいたくない人は、セヴェランス手術を受けることで、産院にいるときだけの別人格にすることができます。そのメリットを魅力的だと感じる人が、ルーモンに金を支払って手術を受けているのかもしれません。あるいは、ルーモン内部と同じように、他の企業に対しても働き方の一つとして、セヴェランスを提供しているかもしれません。

 

 ただし、これではヤギの説明がつきません。それに、このビジネスは”何か怪しいこと”でもありません。セヴェランスへの賛否は世間で広く議論されているらしいので、ルーモン社がセヴェランス手術をしていると公表すること自体は問題ありません。秘密にしていないからこそ、公然とセヴェランスの議論が行われているのですから。

 

 となると、ルーモン社は、セヴェランスよりも危険な手術を開発している可能性があります。それがどのようなものかは全く想像がつきません。記憶をデジタル媒体にアップロードし、コンピュータの中に新たな人格を生み出す手術とかでしょうか。それが何にしろ、ヤギはおそらく実験動物として使われています。あるいは、もしかしたら新たな手術を受けた人は、子ヤギの肉を食べる必要があるのでしょうか。いずれにしろ、あのヤギたちに明るい未来はないでしょう。

 

↓ ルーモンのことをもっとよく知りたいなら、ここにまとまっています。9枚目の動画で、ルーモンの服装規定について語られています。認められている色は、黒、白、紺、灰色、パステルのみ。社風を乱さないように気を付けましょう。

 
 
 
 
 
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職場コメディ

 このドラマは、職場コメディの要素もあります。職場コメディは海外ドラマでもメジャーなジャンルの一つで、代表的なものはタイトルからも分かる通り『ジ・オフィス』。他には、警察署が舞台の『ブルックリン・ナイン‐ナイン』、テレビ局が舞台の『30 ROCK/サーティ・ロック』、ホワイトハウスが舞台の『Veep/ヴィープ』など。もう少しシリアスですが、広告会社が舞台の『マッドメン』にも意外と笑えるところがあります。

 

 『セヴェランス』のコメディは、シュールでブラックです。ヤギもシュールなネタの一種なのかもしれません。普段は厳しいミルチックは、反抗的なジャズにノッて踊り、ディランのワッフルパーティでは、お爺さんのお面を被った人々がセクシーなダンスを披露してくれます(←最も気まずくて理解不能なシーン)。

 

 ちなみに、シーズン1の全9話のうち、第1~3話と第6~9話はベン・スティラーが監督しています。私も大好きなコメディ俳優の一人ですが、今回は監督に徹しているので、出演はしていません。このドラマでのベン・スティラーの監督としての手腕は素晴らしい。ルーモン社内のシーンは、社の規律正しい社風を反映してシンメトリーと直線を多用しています。最終話でのスリリングな展開の演出も見事でした。

 

個性派キャスト

 主演のアダム・スコットは、アメリカでは知名度のある俳優ですが、日本では彼の代表作であるコメディドラマ『Parks and Recreation』と『Party Down』が観られないのでほとんど知られていないでしょう。『ビッグ・リトル・ライズ』でリース・ウィザースプーンの夫をやったり、『グッド・プレイス』で悪魔をやってたりもします。コメディが多めですが、真面目な役もイケるようです。

 

 ルーモンの社員たち、特にマクロデータ改良部の4人は、目鼻立ちがくっきりして特徴的な風貌をしていますよね。ミニチュアセットみたいなオフィスのセットによく似合っています。それを狙ってのキャスティングだったのかもしれません。

 

 最後に一つだけ。デザイン部の社員としてクリストファー・ウォーケンが出演していましたが、せっかくならMDRの社員と一緒に踊ってほしかったですね。なにしろ、Fatboy SlimのWeapon Of Choiceのミュージックビデオでは、サラリーマン風のスーツを着て踊りまくっていたんですから。踊るクリストファー・ウォーケンはカッコイイんですよ。

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