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初見の視聴者には厳しかった~『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』感想~

 2022年、最も話題になった海外ドラマといったらAmazonプライムビデオの『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』でしょう。Amazonが空前絶後の製作費をかけて世に送り出した超大作ファンタジードラマは、世界中で大きな話題になっています。

関連記事:『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』の海外評価が賛否両論の理由は? - 海外ドラマパンチ

 

 ただし、このドラマを観ている人が、全員同じようなストーリーを体験しているわけではありません。J.R.R.トールキンによる小説『指輪物語』シリーズを読んだことがある人もいれば、ピーター・ジャクソン監督による映画『ロード・オブ・ザ・リング』三部作だけを観たことがある人、あるいはどちらも知らずにこのドラマを観始めた人もいます。そういった予備知識の量によって、例えば、ガラドリエルのキャラクターに対して思うことであったり、「モルドール」という地名が出てきたときのリアクションは全然違うはずです。

 

 まずは、この記事を書いている自分の立場をはっきりさせておきましょう。私は、映画『ロード・オブ・ザ・リング』三部作と『ホビット』三部作を観たことがあります。しかし、それは約10年前の話。当時はまだ10歳とかでしたから、映画の内容などほとんど覚えていません。愛しい人を欲しがるゴラムとか橋を渡らせてくれないガンダルフとかはやたらと有名なシーンなので覚えていますが、ケイト・ブランシェットやオーランド・ブルームがどんなキャラクターだったかなどは全く記憶にありません。

 

 そのため、この記事では、ドラマの解説はできません。これだけ話題になっているドラマなので、ちゃんとした人たちによるちゃんとした解説がいくらでもネット上に転がっています。そちらを読めば良いでしょう。その代わりに『ロード・オブ・ザ・リング』本編をほとんど忘れてしまった私の正直な感想をサクッと書き残しておきます。

 

 結論から言うと、色々とよくわかりませんでした。モルドールとかミスリルとか言われても全然わからないんですよね。固有名詞がたくさん出てきますし、それらの説明が十分だったとは思えません。

 

 第1話の冒頭では、ドラマ以前の中つ国の歴史を剛速球で説明していますが、初見の人にそれが理解できるわけもありません。その後、よくわからないなりに、物語がどんどん進んでいきます。物語の展開の中で必要なことを適宜説明するなら、それでも良いのですが、いつまで経ってもよくわかりません。

 

 こういった事態をAmazonは最初から予想していたのか、Amazonプライムビデオの作品ページでは登場人物や設定などが詳しく紹介されています。ここを読んで、やっとハーフット、ドワーフ、ホビットの種族の区別がつきました。

 本来ならば、このような設定紹介ページなど読まなくても、内容がちゃんとわかるようなドラマにするべきです。設定がてんこ盛りなのはJ.R.R.トールキンの原作からだそうですが、小説とは違ってドラマは前のページを頻繁に見返すことはできません。配信ドラマなので、見返そうと思えばできますが、わざわざそんな手間をかける人は多くないでしょう。

 

 でも、ちょっと待ってください。同様の問題は『ゲーム・オブ・スローンズ』で生じていてもおかしくないはずです。こちらも非常に登場人物の数が多いドラマです。種族はほとんど人間とドラゴンおらず、固有名詞の数は『力の指輪』と比べれば少なめなので、それは若干有利に働いているところはありますが、もっと重要なポイントがあります。

 

 それは『ゲーム・オブ・スローンズ』の場合は、たとえ設定がいくつかわからなくても、メインストーリーをちゃんと楽しめることです。メインは七王国を支配する鉄の玉座をめぐる争いなので、要は王の後継者が誰になるかというだけの話です。単純明快です。鉄の玉座の話は1エピソードの中に何回も出てくるので、このポイントを見落とす視聴者はいません。このメインストーリーの周辺で、アリアやデナーリスのサイドストーリーもさらに楽しむことができます。

 

 一方『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』の場合は、メインストーリーがどれなのかわかりません。タイトルに「力の指輪」と入っているくらいなので、指輪に関する話がメインなのかと思いきや、全然指輪が出てきません。エルフのガラドリエル、ハーフットのノーリ、ドワーフのドゥリンらの物語は別々に進行していき、ほとんど交わることもありません。

 

 言うなれば、すべてがサイドストーリーのようです。加えて、キャラクターの弱さもあります。『ゲーム・オブ・スローンズ』は、強烈なキャラクターがたくさん出てきたので、登場時間が少なくても印象的なキャラクターはたくさんいます。一方で『力の指輪』は、キャラクターの8割が善人なので、強烈さに欠けます。そのことも、初見の人にとっての「わかりにくさ」を増しています。

 

 実は『力の指輪』にもメインストーリーはあります。それは本家『ロード・オブ・ザ・リング』です。本家を知っていれば、キャラクターや固有名詞を覚えるのも楽で、本家の裏話的なエピソードの数々も楽しむことができます。実際、SNSなどでは「サウロンは誰だ!」「空から落っこちてきた人はガンダルフじゃないか!?」などの投稿が多く見受けられました。ドラマの最終回も、結局、この2人の正体と指輪作り(指輪の効能は本家を観ないとわからない)をオチとして用意しています。

 

 本家『ロード・オブ・ザ・リング』や小説『指輪物語』は世界的にとても有名なので、それらをよく知らない人が観るべきドラマではなかったのかもしれません。それならそれでも良いのですが、Amazonや製作陣はそのように考えていませんでした。既存ファンを取り込むためだけのドラマにAmazonがこれほど巨額の製作費をかけるとは思えませんし、製作陣は実際に「このドラマをきっかけにトールキンの小説を読んでもらえたら嬉しい」といった旨の発言(DVD&動画配信でーた 2022年9月号)をしています。

 

 これは個人的な意見ですが、マーベルにしてもスター・ウォーズにしても、その他の様々なフランチャイズにしても「これこれの設定を知らないとついていけませんよ」という作品が多すぎて、うんざりしているところはあります。単体で楽しめる作品が欲しい。前日譚ならば本家とは独立したストーリーにもできたはずなのに『力の指輪』はそうはしませんでした。『ベター・コール・ソウル』や『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は、単体としても十分楽しめる作品になっているので、できないはずがありません。

 

 最後にシーズン2に関する情報を。『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』シーズン2の撮影は、すでにイギリスで始まっています。普通のドラマならば1年後にはシーズン2が観られそうなものですが、このドラマに関しては、製作陣もAmazon側もじっくりと時間をかけて良い作品を作りたいということで、もうしばらく時間がかかります。個人的な目論見では、SF大作ドラマ『ウエストワールド』の場合は2年おきに新シーズンが公開されているので、『力の指輪』も同様のペースで2024年夏頃にシーズン2が配信されるのではないかと予想しています。

 

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