近年『ゴシップガール』も『セックス・アンド・ザ・シティ』も『デクスター』もリブートされ、ハリウッドはリブート祭り状態です。でも、2022年に始まったコメディドラマ『リブート』は何のリブートでもなく、シットコムにメタ要素を持ち込んだ斬新な内容になっています。今回は、ハートウォーミングな職場コメディとしても面白いおすすめシットコム『リブート』を紹介していきます。
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基本データ
- 原題:Reboot
- 配信:Hulu(アメリカ)、ディズニープラス(日本)
- 公開日:2022年9月20日~10月25日
- 話数:8
- 脚本:スティーヴン・レヴィタン(ドラマ『モダン・ファミリー』)
予告編
海外ドラマ『リブート』は、ディズニープラスで配信中。月額料金は990円(税込)、年間プランなら9,900円(税込)です。
作品概要
近年のハリウッドのリブート祭りに乗じて、Huluでも2000年代のシットコム『ステップ・アップ』(原題 Step Right Up)のリブート企画が持ち上がりました。この企画を任された新進気鋭の女性脚本家のハンナは、お馴染みのシットコムを大人向けの内容にしようと考えます。オリジナルのキャストたちは、みんな暇そうだったので、全員集まりましたが、その関係はちょっとぎこちない。撮影が始まると、案の定トラブル続き。果たして、無事にリブートドラマを完成させることができるのでしょうか?
……という内容のドラマです。日本では、このドラマはディズニープラスで配信されていますが、本来はHuluが製作しているので、アメリカではHuluで配信されています。もちろんドラマの中で登場するHuluは架空のHuluであり、『ステップ・アップ』というドラマも実在しませんが、色々とメタ的な設定が盛り込まれています。それは、キャスティングにまで及んでおり、ドラマの中の設定と同じような経歴を持つ俳優たちが起用されています。
*追記:『リブート』はシーズン1で打ち切られることが決定しました。現在、Hulu以外でシーズン2を製作できるプラットフォームを探しているようですが、先行きは不透明です。
登場人物/キャスト
ブリー/ジュディ・グリア
最近まで、どこか北欧の国の王と結婚していた。過去には、共演者のリードと付き合っていた。ジュディ・グリアは、主演作は少ないながら、様々な作品に顔を見せている。シットコム『ブル~ス一家は大暴走』『ビッグバン☆セオリー』『ママと恋に落ちるまで』『フィラデルフィアは今日も晴れ』にゲスト出演し、リブート映画『ハロウィン(2018)』シリーズにも出演している。リブート版『ブル~ス一家は大暴走』でも再び出演した。
リード/キーガン=マイケル・キー
演技力を重視したい俳優。『ステップ・アップ』を降板して映画進出を果たそうとしたが、失敗した。キーガン=マイケル・キーは、ジョーダン・ピールと作ったコント番組『Key & Peele』がヒット。コメディ映画を中心に様々な映画・ドラマに出演している。
クレイ/ジョニー・ノックスビル
アルコール依存症だった俳優。『ステップ・アップ』後は、スタンドアップコメディをやったりしている。ジョニー・ノックスビルは、『ジャッカス』シリーズでの体を張ったおバカなスタントでお馴染み。コメディ映画やアクション映画でも活躍している。
ザック/ケイラム・ワーシー
『ステップ・アップ』のときは子役だったが、番組終了後も10代の少年を役をやり続けていた俳優。今は20代半ば。ケイラム・ワーシーは、ディズニー・チャンネルの『オースティン&アリー』にレギュラー出演した後、ドラマ『アメリカを荒らす者たち』『彼女のかけら』などに出演した。
ハンナ/レイチェル・ブルーム
リブート版『ステップ・アップ』のクリエイター。オリジナル版のようなシットコムではなく、大人向けにアレンジしようと考えている。レイチェル・ブルームは、ミュージカルコメディドラマ『クレイジー・エックス・ガールフレンド』でクリエイターと主演を務め、ゴールデングローブ賞では主演女優賞を受賞した。
ゴードン/ポール・ライザー
オリジナル版『ステップ・アップ』のクリエイター。ポール・ライザーは、90年代のシットコム『あなたにムチュー』に主演していた。このドラマは、2019年にリブートされ、こちらでもライザーは主演している。
エレイン・キム/クリスタ・マリー・ユー
Huluのコメディ部門の役員。元々はシリコンバレーのIT企業で働いていた。クリスタ・マリー・ユーは、シットコム『Dr. Ken』『Last Man Standing』などに出演。
リブートされたシットコムに実際に主演したことがあるポール・ライザーを始め、レイチェル・ブルームは実際に脚本家もやっており、ケイラム・ワーシーは実際に子役出身など、演じる役と被る部分がたくさんあります。
現実とドラマの内容がこんがらがりそうな出来事は、実際の撮影中でもしばしばあったそう。ドラマの中では、リブート版『ステップ・アップ』のセットやその撮影機材がよく映っていますが、これはもちろん実際に使用できるものです。実際のドラマ『リブート』のスタッフも、よく『ステップ・アップ』のスタッフ役としてエキストラ出演していたそうなので、さぞかし不思議な撮影風景だったことでしょう。
ちなみに、ドラマ『リブート』のエピソードタイトルにも仕掛けがあります。実は、第1話を除いてすべて実在のシットコムの名前になっています。
第1話 Step Right Up『ステップ・アップ』
第2話 New Girl『New Girl/ダサかわ女子と三銃士』
第3話 Growing Pains『愉快なシーバー家』
第4話 Girlfriends(日本未上陸のシットコム)
第5話 What We Do in the Shadows『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』
第6話 Bewitched『奥さまは魔女』
第7話 Baskets(日本未上陸のシットコム)
第8話 Who's the Boss(日本未上陸のシットコム)
感想
ドラマ『リブート』は、設定がメタ的なので、ストーリーもだいぶ捻った感じでくるのかなと思っていましたが、意外と穏やかで落ち着いたコメディでした。居心地が良い。ただし、第1話のあのシーンは例外。いきなりオッパイが出てきてビックリしてしまいました。別にわざわざオッパイを映さなくても成立したシーンだったとは思うんですが、改めて考えると、あれもメタ的なネタだったのかもしれません。
ジュディ・グリアは、『ブル~ス一家は大暴走』で会社の秘書を演じていました。この秘書は、ときどき公衆の面前で服を脱いでオッパイを見せたがることがありました。『ブル~ス一家は大暴走』は地上波のシットコムだったので、オッパイをそのまま見せることはできないので、直接映らないように背中からのショットで誤魔化していましたが、今回の『リブート』はストリーミングサービスのHuluのシットコムなので、ヌードもOKです。ドラマの中の『ステップ・アップ』は、昔のシットコムを大人向けにリブートしようとしているわけですが、同じことを昔の『ブル~ス一家は大暴走』のネタを大人向けにすることでやってみせたということでしょうか。
直接的な大人向けの表現はこれっきりですが、確かに『リブート』は子供よりも大人に響く内容のシットコムになっています。リブート版『ステップ・アップ』を成功させてやろうという熱意は実はあんまりなくて、ずっと同窓会をやってるような雰囲気があります。そこに、ハンナと若い脚本家たち、さらに新キャストが加わることで、彼らはジェネレーションギャップを感じます。
同窓会組には、ちょっとした哀愁を感じます。ブリーもリードもクレイも、一時はさらなる成功を目指して頑張っていたものの、今はそこまでやる気がないように見えます。若手のザックでさえ、もうティーンエイジャーの役をやれないところに哀愁を感じます。
若い脚本家たちのことは、どうも好きになれません。自分もリベラル寄りの思想を持っていますが、あそこまで意識高い系のリベラルな感じは苦手ですね。コメディ書けなさそう。ハンナは、もう少しバランスが取れている人物なので、そんなに嫌いじゃないですけど。
同窓会組の中でも、ブリーとリードの大人の恋愛の感じが良い。昔は付き合っていたけど、ブリーはどこかの王様と結婚してしまい、リードは彼女持ちです。ブリーは離婚しましたが、リードは今も遠距離恋愛を続けています。互いに気持ちは残っているんだけど、それぞれ相手の事情がわかっているので、深追いしません。その代わりにプラトニックな関係を築いているのが、大人だなぁと思います。
ということで、ドラマ『リブート』は、成熟した大人向けの良質コメディです。特に、海外シットコムに馴染みがある人には、強くおすすめします。