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映画『ノット・オーケー』はSNS世代の感覚を最も的確に捉えている一作

 普段は海外ドラマの話ばかりしていますが、今回は久しぶりに映画の話です。扱うのは、ディズニープラスで独占配信されているオリジナル映画『ノット・オーケー』。インフルエンサーになりたくて嘘をついてしまった女性が向き合う羽目になる出来事を描いた風刺コメディ映画です。

 

 近年、SNSをテーマにした映画は数多く作られていますが、その中でも『ノット・オーケー』は最も的確にSNS世代の感覚を捉えているなと感じました。一応、私自身もSNSネイティブであるZ世代の一員なので、お年寄りの映画評論家とはまた違った視点もあるでしょう。ということで、映画『ノット・オーケー』について書いていきます。

 

 

基本データ

  • 原題:Not Okay
  • 公開日:2022年7月29日
  • 上映時間:103分
  • 配給:サーチライト・ピクチャーズ
  • 配信:Hulu(アメリカ)、Disney+(日本)
  • 監督・脚本:クイン・シェパード
  • 主演:ゾーイ・ドゥイッチ
  • あらすじ:雑誌編集社で働くダニー・サンダースは、職場の気になるインフルエンサーに気づいてほしくて、フランス旅行に行っているとインスタグラム上で嘘をついた。ところが、フランスでテロ事件が起こり、ダニーはこの機会に乗じてテロの被害者のフリをすることにした。

予告編

youtu.be

 

 映画『ノット・オーケー』は、ディズニープラスで独占配信中。月額料金は990円(税込)、年間プランなら9,900円(税込)です。

Disney+ (ディズニープラス)

 

過剰にポップなSNS系映画たち

 SNSをテーマにした映画を作ろうとすると、SNSばかりが前面に押し出されて、やりすぎになることが非常に多い。演出に関しては、例えばポップな演出を増やそうとして、スマホ画面がたくさんたくさん出てきたり、ネオン系の色をこれでもか使ったりするわけです。ストーリーに関しては、若者はとにかく「いいね」が欲しくてなんでもかんでもインスタに上げるような人として描かれることが多いんです。

 

 つまり、そのような映画には、ネット廃人みたいな若者ばっかり出てきます。廃人は確かに現実にもいますが、別にSNSは廃人だけがやっているわけではありません。今の時代は、誰でもSNSをやっています。それなのに、そういった普通の人々がSNSに向き合う姿勢をまともに捉えた映画は少ないのです。

 

 極端に言えば、これまでの多くの映画では、若い人たちはなぜか知らないけれど、とにかく「いいね」を欲しがる謎の新人類みたいな描かれ方をされているわけです。時代に取り残されたお年寄りには、そんな若い人のことがさっぱりわからないので、あたかも薄っぺらい感情しか持っていないような描き方をすることさえあります。

 

SNS世代のリアルな感覚

 そんなもやもやを解消してくれたのが『ノット・オーケー』でした。まず、演出が適度で心地よい。もちろんスマホの映像が使われていたりする演出はありますが、過剰ではありません。ネオン色のパーティーもありますが、1回だけであり、主人公もその雰囲気にいまいち馴染んでいません。若い人の中でも、あれほどコテコテのパーティーを楽しめるのは、一部のリッチなインフルエンサーだけでしょう。

この場面のダニーのセクシーなファッションにはびっくりしました。好きですけど。

 主人公のダニーもネット依存ではありません。インスタグラムで憧れの人に「いいね」をもらって大喜びしたり、SNSでの自分への反応をよくチェックしたりしていますが、このくらいのことなら誰でもやることです。パリに行ったと嘘をついて、テロの被害者に成りすましたのはやりすぎですが、これだってネット依存だからというよりは、自己承認欲求が肥大化しすぎた結果だと思います。

 

 実際、ダニーはネット上の人々から「いいね」をもらうだけではなく、職場の人からちやほやされたり、人々の前に立って話す機会があることも喜んでいます。人々から注目されるなら、それはネットでもリアルでもどっちでも良いのです。この感覚こそがSNSネイティブ世代を適切に捉えています。

 

炎上では止められない(ネタバレ)

 ダニーは、自分の嘘を世間に公表して、好感度がマイナス∞になった後も、自分への反応をまめにチェックしています。そして、自分で勝手に悲しくなって泣いています。自分が炎上しているなら反応は読まないに限るのですが、自分が注目の的であることに変わりはないので、どうしてもコメントを読まずにはいられないのです。その行為が1ミリも楽しくなくても、やめられません。その後、しばらくしたら、さすがに自分がバカらしくなって止めます。

 

 だから、ダニーも炎上経験者の自助グループに出席したり、謝罪をするために人々の前で話そうとしたりします。ただし、自分が最も傷つけた相手であるローワンの後では、さすがにスピーチをすることもできません。たぶんダニーが自分の自己承認欲求が肥大化しすぎていると本当に気づいたのは、このときかもしれません。謝罪のスピーチをすれば、炎上系YouTuberみたいな形でまた注目を集められますが、それを止めるくらいの良心は取り戻したということでしょう。

 

ゾーイ・ドゥイッチと若い才能

 主演のゾーイ・ドゥイッチの演技についても触れておきたい。面白いんですよねぇ。『ゾンビランド:ダブルタップ』では、マディソン♪という新キャラクターを演じていました。このときの役も今回とちょっと似ているのですが、こっちでは頭がお花畑のおバカさんで、異常に面白くて存在感がありました。『ノット・オーケー』でもおバカなのは変わりありませんが、感情は豊かになっています。ムカつくキャラクターではありますが、笑えるし、観ていて興味の湧くキャラクターにはなっていました。それはゾーイ・ドゥイッチの演技のおかげもあるでしょう。

 

 この映画はいわゆる「名作」とは全然違うし、自分も特に優れた映画だとは思わなかったのですが、映画自体にはどこか親近感が湧きました。監督と脚本を務めたのは、女優もやっているクイン・シェパードという人で、現在27歳。こういった若い監督・脚本家なら、変化の激しい現代社会を敏感に捉えることができるんじゃないでしょうか。今後にも期待していきたいですね。

 

 映画『ノット・オーケー』は、Disney+(ディズニープラス)で独占見放題配信中です。

Disney+ (ディズニープラス)

 

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