Everybody has that game that they fell in love with because they make an impact. Those games were somebody’s legacy.
- Ian Grimm, Mythic Quest: Raven's Banquet
Apple TV+で独占配信されているドラマ『神話クエスト』(シーズン1のタイトルは『神話クエスト:レイヴンズ・バンケット』)のシーズン1~2を観ました。コメディとして普通に面白い作品だったのですが、それ以上に格段に面白い神エピソードが3つありました。今回は、その3つのエピソードを中心に『神話クエスト』の紹介をしていきます。
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ドラマ『神話クエスト』基本データ
・原題:Mythic Quest(シーズン1はMythic Quest: Raven's Banquet)
・制作:Apple TV+
・配信年:2019年~
・シーズン数:2、シーズン3と4の制作も決定
・話数:20(各シーズン9話+スペシャル2話)
・キャスト:ロブ・マケルヘニー、シャーロット・ニクダオ、F・マーリー・エイブラムス
・予告編:
ドラマ『神話クエスト』はApple TV+で独占配信中。Apple TV+は初回7日間無料、その後は月額900円(税込)です。Apple TV+で配信されている作品は、すべてここでしか観ることができない独占配信作品です。
『神話クエスト』とは?
Apple TV+で独占配信されているドラマ『神話クエスト』は、ゲーム開発現場を舞台にしたコメディです。制作総指揮であり主演のロブ・マケルヘニーは、現在アメリカで最も長く続いているシットコム『フィラデルフィアは今日も晴れ』も制作しています。
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また『神話クエスト』は、ゲーム開発会社Ubisoftが初めて制作に参加する実写ドラマでもあります。Ubisoftといえば『アサシンクリード』や『ファークライ』シリーズなどの人気ゲームを制作しているところです。
出演者の中には、映画『アマデウス』でアカデミー主演男優賞を獲得したF・マーリー・エイブラムスも含まれています。ゲーム業界からは『Horizon Zero Dawn』の主人公アーロイの声を演じたアシュリー・バーチが出演。実は『Horizon Zero Dawn』の画像がドラマの中でも何度か出てくるので、気を付けて見てみると面白いかもしれません。
『神話クエスト』は面白いのか?
『神話クエスト』のほとんどのエピソードは、職場コメディです。エゴが強いクリエイティブ・ディレクターを筆頭に、負けず嫌いな開発担当、誰からも敬われない製作総指揮、意地悪なマネタイズ担当などが登場し、現場は常にトラブル続き。サイコパスな助手が、事態をさらにかき回しています。
職場コメディと言えば、まず『ジ・オフィス』のイギリス版とアメリカ版が思いつくのですが、それよりはアクが薄まっていると言って良いでしょう。ブラックジョーク満載の『フィラデルフィアは今日も晴れ』と比べれば、なおさらです。登場人物たちは、いつもやいのやいのと言い合ってますが、どこかほのぼのしたところもあって、なごみます。
多くのエピソードは、そんな調子で、普通に面白いです。観てみると、それなりに楽しめると思います。それはそれで全然良いのですが、このドラマを強くおすすめしたいのには、別の理由があります。それが、次に紹介する3つの神回です。
『神話クエスト』3つの神回
シーズン1第5話「ダーク・クワイエット・デス」
最初の神回は、シーズン1の第5話です。このエピソードの内容は、本筋のストーリーとは、ほとんど関係ありません。しかし、だからといってこの回を切り捨ててしまうとしたら、それはあまりにももったいない!
物語は、1993年にゲーム開発者のドクと、ゲーム好きのビーンが出会うところから始まります。そして、死をテーマにしたゲーム「ダーク・クワイエット・デス」を作っていく様子が描かれていきます。
全体の時間は30分しかありません。その中で、ゲーム開発と2人の関係の展開を描き切ったのは、見事としか言いようがありません。最後の2人の場面は、ちょっと切ないけれど、何かを達成した後の爽やかさも感じられます。
ゲーム「神話クエスト」の前にも、「ダーク・クワイエット・デス」ような開発秘話はたくさんあっただろうし、この後も「神話クエスト」が同じような道筋を辿るのかもしれないとも思うと、本筋のストーリーが一気に深みを増してきます。個人的に、このエピソードは、これまで観てきたドラマの全エピソードの中でも、十指に入るレベルの傑作です。
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ボーナス・エピソード「テレワーク中」
世界中がコロナ禍に見舞われた2020年に制作されたリモートワーク回。この時期は、Zoomを使った作品が多く作られていたのですが、これほど良く出来たものは観たことがありません。
話の内容は、「神話クエスト」のメンバーがリモートワークをしているというもの。Zoomあるあるネタや、自宅で撮った奇妙なビデオに笑わせられます。しかし、本当にこのエピソードの良いところは、別にあります。このエピソードは、外出自粛で孤独を感じている人々への、温かいメッセージも込められています。ちょっと泣けるほどです。
シーズン2第6話「バックストーリー」
このドラマには、かつてネビュラ賞(アメリカの権威あるSF賞)を受賞した作家のC・W・ロングボトムというキャラクターが登場しています。彼は、いつもキャラクターの背景の物語(バックストーリー)こそが大事であり、人々を熱中させる核になるものだと力説しています。シーズン2第6話は、そんなロングボトムの過去のエピソードです。
SF雑誌を出版する会社に編集助手として入った若きロングボトムは、同期でSF作家志望の2人とともに、小説の腕を上げていこうとします。しかし、ロングボトムの書いた小説は2人から酷評され、何度書き直しても向上しませんでした……。
このように、ロングボトムがネビュラ賞を受賞するに至った経緯と、ゲームの物語を書くようになった背景が描かれていきます。それまでは、単なるお調子者キャラだったロングボトムが、このエピソードによって、ずっと厚みのある人物になっています。
ちなみに、このエピソードの脚本は、ドラマ『チェルノブイリ』でも脚本を担当し、エミー賞を受賞したクレイグ・メイジンが書いています。
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総評
このような3つの神回があるので、ドラマ全体としては、クオリティに大きな差があります。他のエピソードもそれなりに面白いのですが、この3つがずば抜けて良い。あとは、シーズン1第7話「決闘」、ボーナス・エピソード「エヴァーライト」も良いエピソードです。
本気を出せば、もの凄く良いエピソードが出来るのですが、そうでもないときはそうでもないです。力を抜いているわけではないと思いますが、そんな印象をやや受けてしまうこともありました。普通に面白いんですけどね。
とは言え、神回が神回であることに変わりありません。シーズン1第5話は、本筋のストーリーと完全に独立しているので、なんならこれだけ観ても大丈夫なほどです。機会があったら、ぜひ観てみてください。