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『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』シーズン1ネタバレ感想|鉄の玉座は血のにおい

Dreams didn't make us kings. Dragons did.

- Deamon Targaryen, House of the Dragon season 1

 

 3年ぶりに再開した鉄の玉座争奪戦。今度は本家『ゲーム・オブ・スローンズ』の約200年前、ターガリエン家が王位に就いていた時代の話。またしても泥沼化する後継者争いに目が離せない! 『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』シーズン1のネタバレ感想をまとめました。

 

 

基本データ

  • 原題:House of the Dragon
  • 放送局:HBO
  • 放送期間:2022年8月21日~10月23日
  • 話数:10
  • 原作:ジョージ・R・R・マーティン『炎と血』
  • 原案:ライアン・コンダル、ジョージ・R・R・マーティン
  • キャスト:パディ・コンシダイン、リス・エヴァンズ、ミリー・オールコック、エミリー・キャリー、エマ・ダーシー、オリヴィア・クック、イヴ・ベスト、スティーヴ・トゥーサント

予告編

youtu.be

ドラマ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』シーズン1および『ゲーム・オブ・スローンズ』全シーズンは、U-NEXTで独占見放題配信中。

 

ドラゴンの家系

 今回の玉座争いは、終始ターガリエン家の中の話です。『ゲーム・オブ・スローンズ』では、バラシオンからラニスターに王位が移り、そこにターガリエンやスタークが関わってくるような状況だったので、非常に複雑で壮大な話になっていました。『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は、ターガリエン家周辺の人しか登場しないので、話はいくらかシンプル。ただし、親族の中で結婚したりするので、家系図はやたら複雑です。

 

 ターガリエン家の家系図はいくつかネット上に出回っていますが、いずれも公式のものではないので、ここに掲載するのは控えます。日本語なら、ツイッターに上がっていたこの人物相関図が一番わかりやすかったので、リンクだけ貼っておきます。

https://twitter.com/kokorowesteros/status/1579424981158854656?s=20&t=glaZpwwq6NbU5fUMcvcp-A

 

 ドラマの開始当初に王位に就いていたのは、ヴィセーリス・ターガリエン1世。いとこのレイニスを破って玉座を獲得しました。しかし、その性格には、七王国の治められるほどのガッツがありません。優柔不断なところがありますし、へなへなしています。

 

 それでも、娘のレイニラのことは溺愛しています。初の女性の王位継承者として、レイニラを指名したほどです。「国を治めるよりも、娘と会話することの方が難しい」と、思春期の娘を持つ父親らしい発言もしています。もっとちゃんと国も治めてほしいですけど。

 

 ところが、アリセント・ハイタワーとの結婚は、王としても父親としても悪い決断だったと言わなければいけません。政治的に好都合だと言われたヴェラリオン家のレーナとの結婚は、相手が幼すぎるからと拒否しておきながら、結局、当時14歳ぐらいのアリセントを選んでいます。しかも、アリセントは、娘の親友です。そうまでしてアリセントを選んだのは、ヴィセーリスがアリセントにひとかたならぬ想いを抱いていたからだと思いますが、それもこれもオットー&アリセント・ハイタワーの策略通りの展開です。

 

 その代わりに、レイニラはヴァラリオン家のレーナーと結婚することになります。完全に政略結婚ですが、レーナーはゲイであり、互いに浮気をすることは全く構わないと合意しているので、さほど悪くないカップルだと思います。レイニラはレイニラで、デイモンとの夜の冒険の後は、性的にも活発になりましたから。

 

 結婚するだけなら良かったですが、王族の女性には重要な役割があります。子どもを産まなければいけません。第6話の時点で、レイニラとレーナーの間には3人の子どもがいます。しかし、いずれもレーナーとは似ても似つかない顔をしています。その理由は誰にとっても明らか。3人は、レイニラとレーナーの間の子どもではなく、レイニラとハーウィン・ストロングの間の落とし子だったからです。

 

 みんなわかっていますが、誰も口に出しません。ついに第9話で、ヴェイモンド・ヴェラリオンが全員の目の前で「落とし子だ!」と叫びましたが、次の瞬間、ダイモンによって頭をスライスされてしまいました。頭蓋骨って結構堅いと思うんですが、あんなにすっぱりと切れるものなんですね。ヴァリリア鋼、恐るべし。

 

争いは勘違いから始まる

 そうこうしている間に、ヴィセーリス王は見る見る弱っていき、第8話で死んでしまいます。黙って死んでくれれば良かったのに、最後に余計な一言を口走ってしまいます。「エイゴンこそが王になるべきだ」と。

 

 第8話の冒頭で、レイニラとデイモンの間にできた幼児が登場し、2人はそれぞれエイゴンヴィセーリスという名前だと紹介されました。一方、ヴィセーリス王とアリセントの間の子どもたちの名前は、エイゴンエイモンドヘレイナです。エイゴンという名前は、かつての偉大なる征服王エイゴン1世から取ったものですが、この時点で2人も同じ名前を付けられてしまったのです。

 

 ヴィセーリス王の最後の発言は、レイニラの息子のエイゴンを指しています。ヴィセーリスは、娘のレイニラを王位継承者に指名していますし、その後はレイニラとデイモンの息子が王位を継ぐべきだと考えるのは自然でしょう。しかし、このときのヴィセーリスのベットの傍にいたのは、レイニラではなくアリセントでした。ヴィセーリスは、レイニラに話しかけているつもりでしたが、人違いをしてしまったのです。そのせいで、アリセントは自分の息子のエイゴンこそが次の王になるべきだと言われたと思い込んでしまいます。

 

 

 ということで、盛大なエイゴンの戴冠式を行ってしまいます。この時点で、アリセントはずっと勘違いをしたままだと思いますが、側近の中には、エイゴン違いに気づいた人はいるのでしょうか? もしかしたらいたかもしれませんが、それよりもすべてがアリセントの嘘だと思っている人の方が多かったでしょう。それでも、評議会がエイゴンを王にすることで全会一致した(1人は殺された)のは、レイニラを女王にしたくない気持ちが常にあったからだと思います。

 

 女性を王にすることに関して、評議会はとても後ろ向きです。ヴィセーリスが生きていたときも、ほとんど王が押し切るような形でレイニラを王位継承者とすることが決定されました。でも、本当は王の息子こそが次の王にふさわしいと思っていました。さらに、レイニラの落とし子の件もあります。次の女王が、そんなに性的に奔放では困るだろうと思っていたのです。男だったら、性的に奔放で、いくら落とし子がいたとしても、誰も文句は言わなかったはずですが。

 

 当のエイゴンは、王になりたくなくて逃げ隠れていました。でも、結局捕まってしまい、戴冠式に出席します。そして、大衆の前に立つと、どんどん表情が変わっていきます。王になった今、これだけの人々を自分の好きなように動かすことができるとわかったのです。権力の味を知った瞬間でした。

 

宣戦布告

 ところが、次の瞬間、民衆は地面の下から表れたドラゴンによって虐殺されてしまいます。メレイズに乗ったレイニスでした。レイニスは、そのまま壇上の翠装派(ハイタワーの一味)のもとへ向かい、ドラカリスして焼き尽くすかと思いきや、アリセントを脅すだけで終わります。ここでドラカリスしてしまえば、争いはここで終わったはずですが、それではドラマになりません。

 

 このレイニスの行動の理由は不明です。少なくとも、アリセントたちの命が惜しかったからではありません。カッコよく登場するためだけに、直前に何百人も殺していますから。自分が思うに、これはレイニスの保険だと思います。ここで翠装派を殺せば、次の王はレイニラになりますが、レイニラはレイニスの息子のレーナーを殺した疑惑が掛かっています。実際には、レーナーは殺されておらず、暗殺しに来た恋人とともに姿を消しただけですが、誰もそのことは知りません。

 

 そのため、レイニスはレイニラにも王になってほしくなかったんじゃないかと思うんです。だからといって、エイゴンが王になるのも好まないのですが、ここでレイニラ勢とエイゴン勢が戦えば、双方ともに弱くなり、相対的にヴェラリオン家が得をする可能性があります。そうなったとき、たとえエイゴンが王のままだったとしても、自分の存在感を示すために、アリセントを脅したんじゃないかと。私はそう考えていますが、原作を読んだ人ならちゃんとした考えがあるはずなので、この説は無視しても良いです。

 

 さて、エイゴンが即位するまでの一連の動きを後から知らされたレイニラは、独自の戴冠式を行い、とりあえず女王になります。もちろん、翠装派との争いは避けられないのですが、側近たちが盛んに戦略を話し合っている中、レイニラはできるだけ平穏な解決法を探っています。ドラゴンを使った全面戦争になれば、ウェスタロスは焼け野原になってしまうことを知っているからです。『ゲーム・オブ・スローンズ』最終シーズンで、デナーリスの行為を目撃した皆さんなら、十分理解できるはずです。

 

 レイニラは、諸侯の協力を仰ぐため、息子のルケアリーズをバラシオンのもとに送ります。このときのルケアリーズの心配そうな顔で、完全に死亡フラグが立ってしまいました。ルケアリーズは、ドラゴンもろともエイモンドのヴァーガーによって食いちぎられてしまいます。ただし、これはエイモンドも予期していなかったこと。「そんなつもりじゃなかったのに……」と思っても、時はすでに遅し。

 

 息子の死の知らせを聞いたレイニラは、翠装派への怒りを露わにします。次のシーズンで、全面戦争に突入することは避けられないでしょう。

 

 

TWO BLOODY WOMENとTOO MANY MEN

 この言葉は、レイニラ役のエマ・ダーシーが、レッドカーペットでのインタビューで「このドラマを3語で表すなら?」というときに答えたもの。最初は、TWO BLOODY WOMENと答えたものの、その後、TOO MANY MENと言い直しています。

関連記事:『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』を説明して、レイニラ役エマ・ダーシーの回答が“尖ってて”最高すぎた - フロントロウ -海外セレブ&海外カルチャー情報を発信

 

 フロントロウの記事では、bloodyを「ものすごい」と訳していますが、ドラマの内容を踏まえれば「血なまぐさい」という意味も込められていたはず。『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は、『ゲーム・オブ・スローンズ』よりも死者数は少ないものの、血なまぐささは格段に上がっています。

 

 何が血なまぐさいかといえば、出産のシーンです。第1話のエイマ、第6話と第10話のレイニラの全部で3回映し出されていました。出産シーンは、多くの映画やドラマで観てきましたが、こんなにグロテスクなシーンとして描かれているのは初めてでした。グロテスクというと誤解があるのかもしれませんが、この言葉で形容するしかないと思いました。だって、人の体からちっちゃい人が出てくるんですよ! しかも血まみれで!

 

 

 でも、これこそがリアルなんじゃないかなとは思いました。今はもっと衛生的だとしても、やっていることは変わりませんから。私自身はこれまで誰かの出産に立ち会ったことはありませんし、これからも出産することもありません。男なので。でも、こうやって美化されていない出産シーンを見ることができたのは、むしろ良かったと思います。女性にとっては出産は命がけのイベントなんだというのをこうやって強烈に見せられると、少しは理解が深まります。男性が本当に出産の大変さを理解することはないとしても。

 

 エマ・ダーシーのもう一つの発言、TOO MANY MENは、ドラマの世界観を表すとともに、ハリウッドの業界が男だらけであることを風刺しています。『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』に関して言えば、シーズン1の4人の監督のうち2人、8人の脚本家のうち4人が女性です。

 

 また、本家『ゲーム・オブ・スローンズ』は、女性のヌードシーンの多さや撮影現場での待遇の差などでしばしば批判されていましたが、ヌードシーンに関しては今回はかなり減っています。撮影現場では、性的なシーンを撮影する際にはインティマシーコーディネーターが関わっており、状況はだいぶ改善されているようです。

関連記事:「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」の性的シーン、批判を浴びた「ゲースロ」と差別化 ─ インティマシー・コーディネーターが全面サポート | THE RIVER

 

度重なるタイムジャンプ

 『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』シーズン1は、十分楽しみましたし、満足したのですが、ひとつだけ気になることがあります。あまりにもタイムジャンプが多すぎます。一番大きなタイムジャンプは、第5話と第6話の間で、このときにはレイニラ役とアリセント役を含めて、多くのキャストが入れ替わっています。それ以外にも、ちょこちょことタイムジャンプして、キャストが変わるので、だいぶ混乱しました。

 

『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』S1タイムライン

第1,2話→(3年間)→第3,4,5話→(10年間)→第6,7話→(6年間)→第8,9,10話

 

 この構成は、最初はかなり驚きました。レイニラとアリセントにそれぞれ年齢の違う2人がキャスティングされていることは知っていたので、大人レイニラの時代がメインで、その中で回想のような形で若いレイニラのストーリーが展開するのかなと思っていたんですよね。ところが、ふたを開けてみたら、前半の5話が若いレイニラで、後半の5話が大人レイニラと完全に分かれていました。

 

 ただ、レイニラ役の2人はどちらも凄く良かった。若いレイニラを演じたミリー・オールコックは、日本で視聴できる出演作が他にないくらいで、今回初めてその存在を知りました。前半5話でのレイニラは、若いながらもとても存在感があって、カリスマ的で、でも世慣れていないところもあって、大好きでした。

 

 大人レイニラを演じたエマ・ダーシーも出演作は少ないのですが、Amazonオリジナルドラマ『トゥルース・シーカーズ~俺たち、パラノーマル解決隊~』ですでに見たことがありました。このドラマはコメディだったのですが、もっと面白い役を振れば、一気に躍進するんじゃないかなとこのときから思っていました。本当ですよ。今さら言ったところで、後出しじゃんけんみたいですけど。

関連記事:英国俳優エマ・ダーシーが気になる!『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』に出演 - 海外ドラマパンチ

 

 若いアリセントを演じたエミリー・キャリーは、映画『ワンダーウーマン』や『トゥームレイダー ファースト・ミッション』で主人公の幼少期を演じていたので、子役としての経験は十分。レイニラほど見せ場は多くなかったものの、第5話で戦闘を意味する緑のドレスを着て登場したときは、なかなかの存在感がありました。

 

 大人アリセントを演じたオリヴィア・クックは、ハリウッド映画にも何本か出ているので、知名度はある方だと思います。個人的には、アニャ・テイラー=ジョイと共演した映画『サラブレッド』でのアンニュイなオリヴィア・クックが好き。今回は、対照的に、レイニラへの敵意をむき出しにしています。「最後には礼節と慎みが勝つ」とか言いながら、ラリス公に生足を見せることで協力を得ていたのは悲しいかな。

 

 アリセントは、間違いなくヤバい奴だとは思います。でも、レイニスにも指摘されていた通り、常に父親のオットー、夫のヴィセーリス、息子のエイゴンといった男たちサポートする役でしかないことには同情します。王位継承争いが始まっても、レイニラを殺したくないという思いはありましたし。こういうキャラクターは結構好きですよ。

 

 

まとめ

 もう十分長く書いたので、あと言いたいことを短くどんどん書いておきます。サー・クリストンはクズすぎ。1回寝ただけの相手に16年間も恨みを抱くな。ラリス公は足湯の中で溺れて死んでいてほしい。ヴァーガー、デカすぎ。エイモンド、もう一方の目玉もくり抜いてやろうか!?

 

 デイモンは蟹餌作りでの戦いがカッコよかったけど、最終話でレイニラの首を絞めてたのを見て、やっぱりヤバい奴だったなと再認識。なんだかんだ一番の悪党はオットー・ハイタワー。こいつをドラカリスすれば、あとは丸く収まる気がします。とにもかくにも、シーズン2を早く観たい!

 

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