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海外ドラマ『THE GREAT』シーズン1感想|エカチェリーナが目指したロシアとは?

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We are always not quite as good as we wish. As capable, as bright. It is the human way to fall short of ourselves.

- Leo, The Great season 1

 

 2022年に入ってから、ロシアは国際社会から最も嫌われる国になりました。今のロシア政府、特にプ〇チンが極悪非道であることは今さら言うまでもないでしょう。しかし、ロシアの歴史上には、戦争のない国を目指していた皇帝もいます。それが、エカチェリーナ2世。

 

 今回は、そんなエカチェリーナ2世の若い頃のエピソードを創作をふんだんに交えて描いたドラマ『THE GREAT~エカチェリーナの時々真実の物語~』シーズン1の感想をネタバレありでまとめていきます。

 

 

 

基本データ

  • 原題:The Great: An Occasionally True Story
  • 製作:Hulu(日本ではAmazonプライムビデオで配信)
  • 公開日:2020年5月15日
  • 話数:10
  • 脚本:トニー・マクナマラ
  • 主演:エル・ファニング、ニコラス・ホルト
  • あらすじ:エカチェリーナは、ピョートル皇帝と結婚するためにロシアにやってきた。しかし、そこでの生活は夢に見ていたものとは真逆だった。エカチェリーナは、現状から脱するためにある作戦を練り始める。
  • 予告編:

    youtu.be

 アメリカでは、2021年11月にシーズン2が配信され、好評を受けてシーズン3の製作が決定。日本では、2022年5月9日より「スーパー!ドラマTV#海外ドラマ☆エンタメ」にてシーズン2が初放送される。シーズン1は、Amazonプライムビデオで見放題配信中。

 

夢を抱くエカチェリーナ

 後にロシア皇帝となるエカチェリーナ2世ですが、出身国はロシアではなくドイツ。ピョートル皇帝(3世)と結婚するためにロシアにやってきました。なにしろピョートルは大国の皇帝なので、さぞかし高貴な方だろうし、そんな方と結婚できるなど、まるで夢のよう。ピョートルのために処女を捨てるのも、きっと素敵な初体験になるだろう。と、エカチェリーナは、希望を胸に抱いていました。しかし、ロシアに来て24時間後には、すべての希望が打ち砕かれます。

 

 エカチェリーナに初めて会ったピョートルの「あれ、思ってたのと違ったな。ドイツに返却するか(笑)」という冗談は、まだまだ可愛いもの。皇后は皇帝を喜ばせて子供を産むためだけの存在だと豪語し、浮気はもちろん、エカチェリーナを3Pに誘い、プレゼントしたはずの熊を撃ち殺します。エカチェリーナが逃亡しようとしたときには、溺れて殺す寸前まで追い詰めます。

 

 クズだ。クズ過ぎる。いや、クズなんていう言葉では表せない。こんな男が一国の長で、よくロシアも滅亡しなかったなと感心してしまうレベル。

 

 エカチェリーナも同様の考えに至ったのか、ピョートルを倒して自分が皇帝になることで、ロシアをより良い国にできるのではないかと考え始めます。最初は、ロシアのためというより自分の保身のためにピョートルを殺したいと考え始めたのだと思いますが、結果的にピョートル以外の誰かが皇帝になるのならば、それはロシア国民のためにもなるでしょう。

 

教育が国を変える

 エカチェリーナは、宮廷のブレーンであるオルロを仲間に迎え、計画を練っていきます。基本政策は「女子も含めたロシア全国民の教育」と「戦争をなくすこと」です。学校に関しては、一度ピョートルに相談したときに実行できそうだったのですが、後にそれが女学校になる予定だと知ると、建物を燃やされてしまいました。

 

 次に、エカチェリーナは、宮廷内で教養を広める取り組みを始めます。ヨーロッパから様々な絵画を取り寄せ、最新の科学実験を行わせました。この取り組みは好評。ピョートルも気に入りました。

 

 調子に乗ったエカチェリーナは、それまで教会しか使うことができなかった活版印刷機を人々が使えるようにしたら良いのではないかと提案します。ピョートルも良い気分だったので承諾。しかし、次の日にはわいせつな絵が宮廷中にばらまかれたので、結局、芸術も科学も没収されてしまいます。

 

 人々に自由が与えられると、真っ先に広まるものの一つがセックス関連であるのは、インターネットの時代になっても変わっていません。

 

戦争はもうやめよう

 当時のロシアは、スウェーデンと戦争をしていました。史実でもロシア・スウェーデン戦争というものがあるのですが、これはエカチェリーナが皇帝になった後の1788~1790年に勃発しているので、厳密には違うのでしょうか。「時々真実の物語」なので、この部分はフィクションなのでしょう。

 

 エカチェリーナは、マフィンを持って戦地にも赴き、ロシアが苦境にあるらしいことを知ります。戦争に関しては、ピョートルの采配も非常に下手くそなので、どうやってもすぐには勝てそうにありません。

 

 そこで、エカチェリーナはスウェーデン国王との対談で、ある提案をして停戦に導きました。ある提案というのは、両国王がそれぞれの国で勝利宣言をするというもの。勝利宣言はどちらも嘘なのですが、両国民が相手のことを知らなければ、嘘もばれないだろうという目論見です。戦地から兵士が帰ってきたら、一瞬で嘘がバレると思いますが。

 

 ともかく、この作戦は上手くいき、戦争は無事に終わりました。今のロシアにもエカチェリーナがいたら、速やかに戦争を終わらせてくれたのかもしれませんが、残念ながら今はプ〇チンが政権を握っているので、非常に残念ながらしばらくは終わりそうにありません。

 

クーデター!!!

 エカチェリーナは、軍を統率しているヴェレメントフからの協力を得て、着々と仲間を増やしていきます。ところが、その中の一人のロストフが勝手に行動を起こしてしまいます。ナイフでピョートル皇帝を狙ったロストフですが、周りにいた側近のグレゴールやゲオルギーナの抵抗に遭い失敗。殺されてしまいます。

 

 それでもエカチェリーナは諦めません。自分の誕生日に、突如クーデターの実行を決意。自らナイフを持ってピョートルのもとに向かいます。ただし、そこにフランスの啓蒙思想家として著名なヴォルテールがいたので、ひとまず休止。

 

 ヴォルテールとの会話が終わってから、ピョートルを殺そうと襲い掛かるものの、これまた失敗。いつもは間抜けに見えるピョートルですが、おそらく子供の頃から基本的な戦闘訓練ぐらいは受けてきたんじゃないでしょうか。全く戦いに慣れていないエカチェリーナに、そう簡単にやられるわけがありません。

 

 エカチェリーナの愛人だったはずのレオは、いつの間にか恋愛関係になっていました。このことに気を悪くしたピョートルは、レオを実質的な人質としてエカチェリーナにクーデターをやめるように要求します。

 

 しかし、エカチェリーナはそれでは折れません。レオに別れの挨拶をし、エカチェリーナはクーデターの再開の合図を出します。それに合わせて、ヴェレメントフが号砲を鳴らします。これが、シーズン1のファイナルシーンでした。

 

 
 
 
 
 
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悩める側近たち

 エカチェリーナ皇妃とピョートル皇帝がこのドラマの主人公ですが、それ以外のサブキャラにも面白いストーリーがあります。

 

 ピョートルの側近のグレゴールは、大して取り柄もない人物に見えます。オルロが政策面、アーチー大主教が宗教面、ヴェレメントフが軍事面と担当しているのはわかりますが、グレゴールはピョートルの寒いネタを笑うためだけにいるようなものです。

 

 そんなグレゴールがこの地位にいられるのは、妻のゲオルギーナのおかげ。ゲオルギーナは、ピョートルの愛人として、エカチェリーナが与えない悦びを与えています。ピョートルは驚くほどにわきまえるということを知らない人なので、グレゴールの目の前でも平気でゲオルギーナとセックスをしています。

 

 グレゴールとしてはあまり良い気持ちはしないのですが、ピョートルと自分の関係を繋ぎとめてくれる方法はこれしかありません。もし、ピョートルが死んでエカチェリーナが皇帝になったら、2人は速攻でクビになるでしょう。

 

 エカチェリーナのメイドのマリアンも複雑な背景を持っています。マリアンは、元々高貴な家の出身でした。しかし、酔った父親がピョートルの母親の遺体をもてあそんだため、失脚。マリアンは気の毒なんだけど、父親の行動がゲスすぎて仕方ない。

 

 マリアンは、元のレディの身分に戻りたいのです。当初は、エカチェリーナの計画に付き従い、クーデターが成功した暁にはレディにしてもらう予定でした。しかし、アーチー大司教から、クーデターのことをピョートルに密告すれば、すぐにレディにしてもられるぞとアドバイスを受けます。マリアンは、勝ち馬を選ばなければいけません。選んだのはピョートルでした。

 

 マリアンとしては、ずっとエカチェリーナの計画を見てきて、成功する確率が低いと判断したのでしょう。皇妃とメイドと酒飲みと役人でクーデターですから。あまり成功しそうには思えません。ピョートルが危篤のときに、一時的にエカチェリーナが政治を行おうとしたときも散々でした。最終話のクーデターは果たして成功するのでしょうか?

 

まとめ―ハラショー!―

 このドラマでは「Huzzah!」という謎の掛け声が何度も登場します。これは特に深い意味もなく、昔から使われている英語の掛け声だそうです。注目したいのは、日本語訳の「ハラショー!」の方です。これも、自分はほとんど聞いたことのない謎の言葉だったのですが、調べてみたところロシア語で「素晴らしい」という意味があり、日本でも使われるようになったのだそうです。つまり、この場合はHuzzah!よりもハラショー!の方が正しい言葉なのです。翻訳の妙ですね。

 

 シーズン2は、まもなく日本で初放送されます。近いうちにシーズン3が作られることも決まっています。シーズン2でエカチェリーナのクーデターが成功するのかどうかも気になるのですが、より気になるのはシーズン3。今年に入ってからロシアが侵略戦争を始めてしまったので、このドラマの持つ意味も自然と変わってきたように感じます。

 

 シーズン1の時点で、すでに戦争反対のメッセージは十分込められています。このような社会風刺ネタも多く含むドラマであれば、シーズン3では、さらに現在のロシアやプ〇チンのことを鋭く風刺する内容もあるのではないかという期待もしているのです。ともあれ、まずはシーズン2。楽しみにしています。

 

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