それほど権威があるわけではないですが、注目度は高いゴールデングローブ賞。今回は、過去20年間のゴールデングローブ賞のテレビ部門の受賞作をすべて紹介し、それぞれの作品が2023年3月末時点で配信されている動画配信サービスも紹介していきます。
ゴールデングローブ賞の授賞式は毎年1月に行われ、対象となるのはその前の1年間に放送・配信された作品です。そこで、ここではそれぞれの受賞年を授賞式の前年(つまり2023年のゴールデングローブ賞で受賞した作品は2022年)として表記しています。
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ドラマ部門
日本語にすると誤解を招きやすい「ドラマ部門」。英語のdramaは日本語で言うところの「人間ドラマ」の「ドラマ」のことであり、テレビドラマのことではありません。だから、ゴールデングローブ賞(GG賞)の映画部門にもドラマ部門があります。ともかく、ここで扱うのはテレビドラマ部門のドラマ部門の受賞作です。
『24-TWENTY FOUR-』2003年
テロ対策ユニットに所属するジャック・バウアーの活躍をリアルタイム形式で描き人気を博した。
配信:Disney+(ディズニープラス)
『NIP TUCK/マイアミ整形外科医』2004年
2人の整形外科医とその周囲の人間模様をセンセーショナルに描いたFX製作のドラマ。
配信:なし
『LOST』2005年
ある無人島に墜落した飛行機に乗っていた人々を描く大ヒットドラマ。J.J.エイブラムスやデイモン・リンデロフらが製作総指揮を務めた。
配信:Disney+(ディズニープラス)
『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』2006年
病院の外科医たちの人間模様を描いたドラマ。現在までに19シーズンが放送されているほどの長寿ドラマになっている。
配信:Disney+(ディズニープラス)
『マッドメン』2007年、2008年、2009年
1960年代のニューヨークの広告代理店で働く人々の人間模様を描く。GG賞作品賞を3回受賞しており、これは『X-ファイル』と並んで史上最多。ちなみに、エミー賞は4連覇している。
配信:なし
『ボードウォーク・エンパイア 欲望の町』2010年
禁酒法時代のアメリカを舞台にしたクライムドラマ。スティーブ・ブシェミが主演し、第1話はマーティン・スコセッシが監督した。
配信:U-NEXT
『HOMELAND/ホームランド』2011年、2012年
双極性障害を持つ主人公がアメリカを襲うテロに挑むSHOWTIME製作ドラマ。主演のクレア・デインズも2度主演女優賞に輝いた。
配信:Disney+(ディズニープラス)
『ブレイキング・バッド』2013年
麻薬作りに手を染め始める高校教師の姿を描いたAMC製作のドラマ。世界で最も高く評価されているテレビドラマの一つ。前日譚の『ベター・コール・ソウル』も非常に高い評価と人気を得た。
配信:Netflix
『アフェア 情事の行方』2014年
不倫をしている男女をめぐるサスペンスドラマ。1話の中で視点が切り替わる2部構成になっており、同じ出来事が別の人物の視点から描かれるユニークな作りになっている。
配信:Hulu
『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』2015年
社会不安症のハッカーが主人公のテクノスリラードラマ。主演は、映画『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレック。
配信:Netflix
『ザ・クラウン』2016年、2020年
エリザベス2世統治時代のイギリス王室を描いた歴史ドラマ。シーズン6で完結する予定。現時点で、Netflixオリジナルドラマとして唯一GG賞およびエミー賞の作品賞を受賞したことのある作品。
配信:Netflix
『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』2017年
女性たちが”侍女”として国家に利用されるディストピアを描いた米Hulu製作のドラマ。シーズン6で完結予定。主演女優賞に輝いたエリザベス・モスは、2013年にも『トップ・オブ・ザ・レイク』でリミテッドシリーズ部門の主演女優賞を獲得している。
配信:Hulu
『ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ』2018年
1980年代のアメリカを舞台に、アメリカ人の夫婦のフリをして諜報活動を行っている2人のソ連のスパイの話。
配信:Disney+(ディズニープラス)
『メディア王~華麗なる一族~』2019年、2021年
世界的メディア企業のCEO一家による後継者争いを描いたHBO製作ドラマ。シーズン2と3でGG賞とエミー賞を連続W受賞。
配信:U-NEXT
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』2022年
社会現象を引き起こした大ヒットドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の前日譚。ターガリエン家による骨肉の王座争いが描かれる。本家が5度ノミネートされて逃し続けたGG作品賞をシーズン1で獲得。
配信:U-NEXT
ミュージカル・コメディ部門
GG賞では、伝統的にコメディとミュージカルが同じ部門で括られています。とはいえ、ミュージカル枠で受賞したのはこの20年間では『glee/グリー』ぐらいのもので、他はすべてコメディ作品です。
『ジ・オフィス』2003年
普通の会社のオフィスの出来事をドキュメンタリー形式で描いたシットコム。イギリスのドラマとして史上初めてGG賞を受賞した。後にアメリカでリメイクされ、こちらはエミー賞の作品賞を受賞している。
配信:Amazonプライムビデオ、Hulu、U-NEXT
『デスパレートな妻たち』2004年、2005年
ウィステリア通りに住む女性たちを描いた大ヒットドラマ。南米各国でリメイクもされている。
配信:Disney+(ディズニープラス)
『アグリー・ベティ』2006年
オシャレに疎いベティがファッション雑誌の編集部で働くことになる。コロンビアのドラマ『ベティ~愛と裏切りの秘書室』のリメイク版。
配信:Disney+(ディズニープラス)
『エキストラ』2007年
なかなか俳優になれないエキストラの悲哀を描いた英国コメディ。ドラマ『ジ・オフィス』の製作陣が手掛けた。
配信:Amazonプライムビデオ、Hulu、U-NEXT
『30 ROCK/サーティ・ロック』2008年
人気番組『サタデー・ナイト・ライブ』を模したコント番組の裏側を描く。テレビ業界ネタやアメリカの政治ネタも多く扱われている。
配信:なし(Amazonプライムビデオでシーズン3までレンタル配信中)
『glee/グリー』2009年、2010年
高校の合唱部を舞台にしたドラマ。毎回、合唱部のメンバーによるパフォーマンスが披露される。
配信:Disney+(ディズニープラス)
『モダン・ファミリー』2011年
3つの家族の日常をドキュメンタリー形式で描く。エミー賞は5年連続受賞しており、これは歴代最多タイ記録。
配信:Disney+(ディズニープラス)
『GIRLS/ガールズ』2012年
ニューヨークに住む4人の20代の女性のリアルな日常を描いたHBOドラマ。脚本兼主演のレナ・ダナムの実体験に基づくエピソードも多数。
配信:U-NEXT(予定)
『ブルックリン・ナイン‐ナイン』2013年
ブルックリン99分署の警察官たちのシットコム。刑事ドラマパロディが満載。『サタデー・ナイト・ライブ』のアンディ・サムバーグが主演。
配信:Netflix
『トランスペアレント』2014年
一家の父親がトランスジェンダーであることをカミングアウトしたことから始まる家族のドラマ。ストリーミングサービス製作のドラマとして初めてGG作品賞を受賞。
配信:Amazonプライムビデオ
『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』2015年
交響楽団のメンバーたちが主人公のAmazon Originalドラマ。シーズン4では日本も舞台になっている。
配信:Amazonプライムビデオ
『アトランタ』2016年
成功を目指すラッパーとその仲間たちの日々を描いたコメディ。シュールなユーモアや、現代の人種差別問題を風刺的に扱った独特な作風が特徴。
配信:Disney+(ディズニープラス)、Netflix(*シーズン3まで)
『マーベラス・ミセス・メイゼル』2017年
1950年代のアメリカを舞台に、スタンダップコメディアンを目指す主婦の姿を描く。2023年に公開されるシーズン5で完結する。
配信:Amazonプライムビデオ
『コミンスキー・メソッド』2018年
昔は有名俳優だったが、今では演技講師をやっている男が主人公のドラマ。マイケル・ダグラス主演。
配信:Netflix
『フリーバッグ』2019年
自由奔放に生きているが、自分の人生も周囲の人間たちの人生も破壊してしまう女性が主人公。自身の舞台をもとに、フィービー・ウォーラー=ブリッジ製作・脚本・主演を務めた。
配信:Amazonプライムビデオ
『シッツ・クリーク』2020年
元お金持ち一家が田舎町で暮らすことになってからの日々を描く心温まるコメディ。カナダ製作。
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配信:Netflix
『Hacks(原題)』2021年
ベテランのスタンドアップコメディアンが主人公のコメディ。日本未上陸作品。
配信:なし
『アボット・エレメンタリー』2022年
フィラデルフィアの公立小学校の教員たちが主人公のシットコム。地上波ドラマとしては9年ぶりのGG作品賞を獲得。
配信:Disney+(ディズニープラス)
リミテッドシリーズ部門
正式には、リミテッドシリーズ・アンソロジーシリーズ・テレビ映画部門。リミテッドシリーズは1シーズンで完結するドラマ、アンソロジーシリーズはシーズンごとに内容が完全に完結するドラマのことを言います。
『恋するリベラーチョ』2013年
実在したピアニストのリベラーチョを主人公にした伝記映画。スティーブン・ソダーバーグ監督。
配信:なし
『FARGO/ファーゴ』2014年
映画『ファーゴ』に着想を得たスピンオフドラマ。一般人と殺し屋が出会ったしまったことから始まる悲劇の顛末をブラックユーモアたっぷりに描く。
配信:Amazonプライムビデオ、Hulu
『ウルフ・ホール』2015年
低い身分から王の側近になるまで上り詰めた実在のイギリスの政治家トマス・クロムウェルの人生を描く。
配信:Amazonプライムビデオ、Hulu、U-NEXT
『アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件』2016年
全米で大きな話題となったO・J・シンプソンの事件をドラマ化。
配信:Disney+(ディズニープラス)
『ビッグ・リトル・ライズ』2017年
殺人事件に巻き込まれることになる主婦たちの物語。リース・ウィザースプーン、ニコール・キッドマンら主演。
配信・U-NEXT
『アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺』2018年
デザイナーのジャンニ・ヴェルサーチが暗殺された実際の事件をドラマ化。
配信:Disney+(ディズニープラス)
『チェルノブイリ』2019年
チョルノービリ原発事故の発生から原因究明に至るまでの一連の出来事をドラマ化。
配信:U-NEXT
『クイーンズ・ギャンビット』2020年
チェスの天才少女が世界的に活躍するようになる過程を描いたフィクションドラマ。
配信:Netflix
『地下鉄道』2021年
19世紀の黒人奴隷が南部からの脱出を目指す物語。コルソン・ホワイトヘッドの同名小説をドラマ化。
配信:Amazonプライムビデオ
『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』2022年
リゾートホテルにやってきた観光客と地元の人々の数日間の様子をシニカルに描く。
配信:U-NEXT
ゴールデングローブ賞の傾向
アメリカのテレビ業界の賞といえば、権威があるのはもっぱらエミー賞なので、ゴールデングローブ賞はいわばお祭り程度の意味しかありません。エミー賞が約2万人の会員の投票によって決められるのに対し、ゴールデングローブ賞がたった105人のハリウッド外国人記者協会のメンバーによって決められることを考えれば当然でしょう。
ただし、そのおかげで、エミー賞とゴールデングローブ賞の受賞作にはそれぞれ異なった傾向が見られます。エミー賞は連続受賞が非常に多いです。近年でも『ゲーム・オブ・スローンズ』が連続ではないものの4回、『モダン・ファミリー』が5年連続、『Veep/ヴィープ』が3年連続受賞などをしています。
一方、ゴールデングローブ賞では、連続受賞は稀です。近年では『マッドメン』が3年連続受賞したくらいで、あとはせいぜい2度しか受賞していません。また、シーズン1での受賞が多いのもGG賞の特徴です。近年こそ『ジ・アメリカンズ』と『シッツ・クリーク』はファイナルシーズンでの受賞ですが、それ以外は大体シーズン1かシーズン2での受賞です。
ゴールデングローブ賞は、エミー賞よりも大衆的であるとも言われます。ヒットドラマ『グレイズ・アナトミー』『デスパレートな妻たち』『glee/グリー』といった作品は、エミー賞よりもゴールデングローブ賞こそ相応しいように思います。こういった作品にちゃんと称える賞があるのは良いことなのかなとも思います。
2022年の授賞式は、ゴールデングローブ賞の会員が多様性に欠けすぎているという理由でハリウッドからボイコットされましたが、2023年には一応元通りに戻りました。今後のことはわかりませんが、これからもゴールデングローブ賞を楽しんでいけると嬉しいですね。