2020年12月から配信が始まった『エクスパンス~巨獣めざめる~』シーズン5。シーズン6がファイナルシーズンになることが決まった、本格SFシリーズ『エクスパンス』のシーズン5をネタバレあらすじも含めて振り返ってみます。
関連記事:エクスパンス~巨獣めざめる~』シーズン4あらすじ&感想~プロト分子バスターズ!~ - 海外ドラマパンチ
『エクスパンス』シーズン5基本データ
・原題:The Expanse
・配信元:Amazon
・配信日:2020年12月16日~2021年2月3日
・話数:10
・予告編:
あらすじ(ネタバレ)
惑星イーロスから戻ってきたロシナンテ号は、ティコ・ステーションで修理を受けていた。ホールデンは、ジャーナリストのモニカ・スチュアートから、ベルターが研究用にプロト分子を持っていることを聞く。しばらくして、マルコ・イナロスの仲間がプロト分子を奪いに来る。その攻防の最中に、フレッド・ジョンソンは致命傷を負って亡くなる。
火星では、ボビーとアレックスが火星軍が絡む事件を秘密裏に調査していた。火星軍の高官が、マルコのテロ集団(フリー・ネイビー)に火星軍の船を渡そうとしていることを知り、2人は船を追いかけ始める。
カミーナ・ドラマーは、他のベルターたちとは独立に旅をしていた。マルコの居場所を知ったドラマーは、アシュフォードの敵を討つために、マルコのもとに向かう。だが、結局はマルコに協力せざるを得なくなる。
ナオミは、マルコとの息子のフィリップ・イナロスに会いに行く。しかし、フィリップはマルコの仲間になっており、ナオミはマルコたちに捕らわれてしまう。ナオミはマルコを殺そうとするなどした後、自ら船外に出て近くの宇宙船のチェツェモカ号に移る。だが、その船はホールデンのロシナンテ号をおびき出すためのおとりであり、ナオミ名義の救難信号が送られていた。ナオミは、自分を助けに来ないように、救難信号に細工をする。
プロト分子の載っているズミヤ号を追っていたロシナンテ号だが、あとわずかのところでズミヤ号は自爆してしまう。ナオミ名義の救難信号を受け取ったロシナンテ号とアレックスの船は、ナオミの努力もむなしく、チェツェモカ号を救助に向かう。このことを知ったナオミは、船が来てしまっては困るので、自ら宇宙空間に飛び出す。そこを、運よくボビーが捕らえ、ナオミは助かる。しかし、アレックスは長期に渡る高速航行が原因の脳卒中で亡くなってしまった。
国連事務総長選でナンシー・ガオに敗れたアヴァサララは、左遷されて月にいた。マルコによるさらなるテロ行為の危険を感じたアヴァサララは、地球上にいたナンシー・ガオに警告するも、彼女が乗っていた飛行機は墜落してしまう。その結果、急遽、運輸大臣のデイヴィッド・パスターが事務総長になる。
パスターは、アヴァサララの反対を無視し、フリー・ネイビーへの報復のために、ベルタ―たちの多く住む木星の衛星カリストを攻撃する。パスターはさらなる攻撃を計画するも、アヴァサララら多くの閣僚の反対を受け、不信任決議を受けてしまう。事務局長に指名されたのは、またしてもアヴァサララだった。
エイモスは、故郷の地である地球のボルティモアに戻っていた。隕石衝突のとき、刑務所でクラリッサ・マオと面会していたため、彼女とともに逃避行に出る。昔の仲間とも出会い、他の勢力との衝突もありながらも、何とか地球を脱出して月に到着する。エイモスは、クラリッサをロシナンテ号の新たなクルーとして、ホールデンに紹介する。
ズミヤ号の自爆とともに破壊されたと思われていたプロト分子だが、実は自爆の直前に発射されており、密かに研究が進められていた。どうやら、何かの船を作るのに、利用されている模様。リング周辺にいた地球軍の船は、フリー・ネイビーや火星軍の船から攻撃を受け、破壊されてしまう。リングに入っていった火星軍高官の船は、謎の現象により蒸発してしまった。
感想(ネタバレあり)
2020年最後に始まった『エクスパンス』シーズン5。某パンデミックの影響により、大作映画は軒並み公開延期されたために、SF好きにとっては供給が少ない年だったかも。そんな年の最後に『エクスパンス』シーズン5が公開してくれたのは、それだけでも嬉しい。
そして、1月にはシーズン6への更新とともに、このシーズンをもって完結することが発表されました。シリーズが終わってしまうのは少し寂しいですが、打ち切りではなく完結してくれるので、有終の美を期待しても良さそうです。さて、そんなファイナルの一つ前のシーズンとなったシーズン5の感想をまとめていきます。
①地球 vs フリー・ネイビー
シーズン5は、かなりのスロースタートで始まった印象です。ロシナンテ号のクルーは、バラバラになっているところから始まります。ティコ・ステーションにいるホールデンとナオミ、火星のアレックスとボビー、月のアヴァサララ、地球のエイモスといった調子。様々な場所で、同時進行で物語が進むプロットは、シーズン1を彷彿とさせます。
物語の大きな転換点となったのが、第3話のラスト。フリー・ネイビーが地球に巨大な隕石を落とします。間違いなく、史上最大規模のテロ攻撃です。ちなみに、シーズン3までは地球・火星・ベルタ―たちが争い合っている状態から、共闘に向かうのが大まかな流れでした。それ以降、この3つの間での争いはなくなっています。そこから、今度はフリー・ネイビーというテロ組織が台頭し、地球に攻撃を仕掛けています。
この状況は、かなり現実社会を反映したものになっているのでしょう。1980年代まで、世界は東側諸国と西側諸国の冷戦状態にありました。これこそが、世界の懸念事項でした。ですが、1989年のマルタ会談により、大国間での争いは一応の終結を迎えました。
その後、2000年9月11日には、世界貿易センタービルを標的にした史上最悪のテロ攻撃が発生してしまいます。それからは、アメリカvsテロ組織(アルカイダ)の戦いが始まります。明らかに『エクスパンス』は、この世界情勢の流れを反映した展開になっています。
この隕石の衝突テロを、宇宙からの視点だけでなく、地上のエイモスの視点からも描いているのは上手い。SFを観ていると、惑星が爆破されても、それが甚大な被害を与えていることを忘れてしまうことがあります。『スター・ウォーズ エピソードⅣ』で惑星オルレアンが破壊されたときも、実際の犠牲者数に対しては見た目はあっさりしていたと感じます。地球にいるエイモスの話は、その後のアクションも、とても面白かったです。
②後半は若干引き延ばし気味か
シーズン5について言うと、今回はさすがに引き延ばしすぎの感があります。序盤はそこそこ順調に話が進んでいくのですが、中盤から後半にかけては、ほとんど誰も動きません。アレックス&ボビーは船で高速航行を繰り返すのみで、ホールデンとマルコもほとんど自分の船にいるだけです。
これもおそらくは、コロナ禍の影響なんでしょうか。満足に撮影をすることが出来なかったとか。それでも、話数を削ったり、突然アニメになったり(『ブラックリスト』シーズン7)はせず、これだけの質の作品を仕上げてくれたので十分でしょう。
アレックスの最期に関しては、かなり唐突だなとは思いましたが、これはアレックス役の俳優が悪い。シーズン5でもって降板するらしいのです。ということで、やや無理やりな結末を付けられています。高速航行による脳卒中は、あり得ない話ではないと思いますが、それにしてもね。あと1シーズンなんだから、居てくれよぉ。
追記:アレックス役のキャス・アンバーは、セクハラ行為の告発により降板だそうです。それなら仕方ないです。すべてこいつが悪い。
③苦難のナオミ&ドラマ―
間違いなくシーズン5で最も多くの苦難を経験することになったのはナオミでしょう。息子のフィリップに捕らえられ、宇宙空間に体一つで飛び出し、酸素が少ないなかで通信装置に細工をし、再び宇宙空間に出ていきます。
最初に宇宙空間に飛び出して助かったときは、さすがにアリか?と思ったのですが、1分ぐらいだったら意外と生きていられたりするのかな?放射線ヤケドはしていたし、ギリギリあり得る??
もう一人、いくつかの困難に直面するのがカミーナ・ドラマー。ドラマーが敬愛していたアシュフォードは、前シーズンでマルコに殺されています。マルコに復讐したい気持ちは山々なのですが、どうしてもそうすることは出来ず、従わざるを得ません。非常に歯がゆい。仲間にも、ドラマーに心から同調してくれる者はおらず、孤独な思いが募っていきます。ツラい。
最後には、ようやくマルコに反旗を翻すのですが、マルコに預けていた仲間が犠牲になってしまいます。完全にはスッキリといかない展開ですが、むしろこういう方がリアルに感じられて、物語としては好きです。
④ファイナルシーズンへ
シーズン5最終話の最後には、物語は興味深い展開を見せます。火星軍の高官が意味深に登場し、直後にリングに入って蒸発してしまうのです。謎。そういえば、今シーズンはプロト分子が実際に暴れる展開がありませんでした。ファイナルシーズンでは、この謎の多いプロト分子に関しても、明らかになることを期待しています。
マルコ・イナロスとの対決に関しても、今はやられっぱなしと言っても良い状況です。マルコとの決着を付け、プロト分子の謎も解決し、太陽系は真の平和に向かうことが出来るのか?シーズン6が今から待ち遠しいです。
追記:ファイナルとなるシーズン6がAmazonプライムビデオで12月10日から配信されることが発表されました。同時に公開されたティーザー予告ではマルコ・イナロスやプロト分子の子供の姿が見られます。これは楽しみ!