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海外ドラマ『別世界からのメッセージ』~これは、あなたの物語です~

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 今月になって、しれっとAmazon Prime Video(アマプラ)に新作ドラマ『別世界からのメッセージ』が来ていました。製作したのは、『ブレイキング・バッド』や『ウォーキング・デッド』で知られるAMCなので、これは期待できる!アメリカで先月放送が終わったばかりのドラマなので、アマプラにしては仕事が早いなぁ(笑)と思いながら、早速観てみました。

 

 

 

 

『別世界からのメッセージ』基本データ

・原題:Dispatches from Elsewhere

・放送局:AMC

・放送日:2020年3月1日~4月27日

・話数:10

・一話あたりの長さ:42~52分

・あらすじ:

 それまで全く普通の生活を送っていたピーター、シモーン、ジャニス、フレドウィンの4人は、あるゲームに参加することになる。それは、謎の組織から送られてくる指令をもとにクララという女性を探すものだった。

・予告編:

www.youtube.com

※ドラマ『別世界からのメッセージ』シーズン1は、現在Amazon Prime Video(アマプラ)で配信中。1シーズンで完結するリミテッドシリーズです。 

 

ドラマ『別世界からのメッセージ』紹介

 『別世界からのメッセージ』は、今年AMCで放送されたばかりの新作ドラマです。AMCは、名作『ブレイキング・バッド』『ウォーキング・デッド』を製作してきたケーブルテレビ局で、近年は特にドラマ作りに力を入れています。

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 今回の『別世界からのメッセージ』は、4人の一般人が謎のゲームに参加することになり…という内容のドラマです。映画やドラマでゲームと言われるとデスゲームのようなものを想像してしまいますが(自分だけかもしれないけど笑)、このゲームはそういった類のものではありません。ゲーム自体は、脱出ゲームの拡大版みたいなもので、見るからに楽しそうです。ただ、もちろんその裏があったりするわけですけどね(^_-)

 

 大まかなストーリーや展開としては英国ドラマ『ユートピア』や同じくAMCの『プリ―チャー』あたりが近いです。ただ、これらのドラマで見られたヴァイオレンス描写は『別世界からのメッセージ』にはなく、ユーモアを交えた温かなストーリーが展開されていきます。

 

 主人公の1人のピーター及び制作総指揮を務めるのが、ジェイソン・シーゲルです(映画『SEXテープ』でキャメロン・ディアスと共演していた人)。他に、若手女優イブ・リンドリー、『フォレスト・ガンプ』や『リンカーン』に出演したオスカー女優サリー・フィールド、ミュージシャンとしても活動しているアンドレ・ベンジャミン(アンドレ・3000)など、多彩なキャストが登場します。そして、映画『スター・ウォーズ エピソードⅨ』などで知られるリチャード・E・グラントも出演しています。

 

 個人的には、クララ役のセシリア・バラゴットを久しぶりに見られたのが嬉しかったですね。観ているときはわからなかったのですが、彼女はディズニー・チャンネルのドラマ『ガール・ミーツ・ワールド』に出てたスマックルなんですよ。このときはガリ勉の女の子という役だったのですが、今回はなかなか素敵な女性になったなぁという印象を受けました。どちらかというと、自分は彼女が演じていたクララというキャラクターが好きなのかな? まあどっちでも良いんだけど、今後も映画やドラマに出てくれると嬉しいです。

 

 『別世界からのメッセージ』では、このキャスト全員がとても良い味を出しています。特に、視聴者に語り掛けてくることもあるリチャード・E・グラントは最高のキャラクターですね。ピーター役のジェイソン・シーゲルも面白かったし、新人イブ・リンドリーも良かった。登場人物は軒並みキャラが濃いのですが、嫌みもなく楽しく観ていけます。

 

 ストーリーについては、あらすじを読んでもらえれば何となくわかるかもしれませんが、ネタバレ厳禁です。最終話の種明かしは、かなり驚くことになると思います。この仕掛けは、これまでのテレビドラマにはなかった斬新なものです。

 

 ただ、そのゲームや謎の組織にまつわるストーリーの他に、4人のストーリーについても描かれていきます。むしろ、こっちの方がメインとも言えるでしょう。孤独だった4人が、今回のゲームを通してどのように変化していくのかにも注目です。前半のストーリー展開はかなり謎が多いので、やたらとストーリーばかりを追うよりは、その過程を存分に楽しむ方が良いかもしれません。

 
 
 
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ドラマ『別世界からのメッセージ』登場人物

ピーター

 至って平凡な生活を送っているサラリーマン。友人や家族もおらず、ずっと孤独な生活を送っていた。今回のゲームを非常に楽しんでいる。

 

シモーン

 美術館に勤務するトランスジェンダーの女性。トランスジェンダーゆえに、これまで親しい友人がいたことがなく、孤独な思いをしていた。今回のゲームでは、ピーターと意気投合して楽しんでいる。

 

ジャニス

 70代の女性。多少の困難はありながらも幸せな結婚生活を送っていたが、昨年末に夫が脳卒中で倒れてしまった。今回の非日常な体験を楽しんでいる。

 

フレドウィン

 経済学と哲学を専攻していた(自称)非常に優秀な青年。陰謀論者。今回のゲームには、かなり熱中して取り組んでおり、ルールを破ってでも何とか謎を解き明かそうとしている。

 

オクタビア・コールマン

 ジェジューン協会の会長。各エピソードの冒頭で、視聴者に向けて話かけてくる謎の人物。

 

 

 

感想・解説(ネタバレあり)

 『別世界からのメッセージ』は、謎の男の沈黙から始まります。そして、色々と語り掛けてきて、「ピーターを、あなただと思ってください」という奇妙なことを言い出します。そして、ピーターの非日常な体験が描かれていきます。そして、第2話ではシモーン、第3話ではジャニス、第4話ではフレドウィンの視点で物語が進んでいきます。

 

 前半は、観ていても何が起こっているのかよくわかりません。「ジェジューン協会」と「別世界連合」というところが仲が悪く、クララという人物が鍵なのはわかるぐらい。でも、その謎を個性的な4人が追っていく展開はとても楽しいです。特に、ピーターが面白い。無表情で繰り出すネタがシュールでツボです(笑)

 

 第7話で、ゲームは終わりを迎えます。そして、4人が追っていた謎も、実は彼らのために特別に用意されたゲームであったことが明らかになります。それ自体は何となく想像のついていたことではあります。

 

 第8、9話では、ゲームが終わったあとの4人の新たな生活やクララの正体が明らかになります。ここまではわかるんです。ドラマの中でそれなりに丁寧に種明かしをしてくれるので、あまり混乱することもないでしょう。問題は最終話です。

 

 

 

最終話解説(ネタバレあり)

 最終話では、突如メタ的な視点が導入されます。ピーターを演じているのは、ジェイソン・シーゲルという人なのですが、この人の幼少期の話、現在に戻ってアルコール依存症の集会、及び他の3人との出会いが描かれていきます(これも実話ではなく、作り話なのですが)。最後には、視聴者から集めた動画が次々と流されます。

 

 つまり、このドラマの仕掛けというのは(すでにこの記事のタイトルにしているように)文字通り「あなたの物語」であるということなのです。物語の中の4人は非日常の体験を通して、現実の生活にも変化が訪れました。視聴者も、このドラマの非日常なストーリーを楽しんでもらって、これを参考に登場人物らと同じように現実世界にも変化が訪れると良いよね、といったような仕掛けになっています。

 

 実はこのドラマに登場するゲームは、実際に2008年にサンフランシスコで行われたイベントが元ネタです。すなわち、この非日常を体験できるゲームは実際にあったわけで、そんなことからもこの仕掛けがあったことが伺えます。

 

 最終的なメッセージは「あなたが自分の殻に閉じこもっている限り、あなたはあなたである。だが、本質的に人々は同じであることに気づけば、”あなた”も”私”もなく、そこには”私たち”しか存在しない」といったことなのではないでしょうか。ピーターら4人が元々そうであったように、自分の殻に閉じこもっていては、他人は他人に過ぎません。でも、視野を広げてみれば、他人のことも理解できたり自分の可能性を広げられたりして、差別とかもなくなるのではないでしょうか。おそらく、そういうメッセージなのでしょう。

 

 言っていることは何となくわかりますし、良いことなのかもしれません。でも、自分は正直この最終話が好きではありません。なぜなら、ストーリーの中だけでも、このメッセージは伝えることができるので、最終話でメタ視点を導入した必要性があまり感じられないためです。しかも、「第9話まではジェイソン・シーゲルが作ったお話なのですよ」と言われてしまっては、夢落ちとそう変わりません。大胆な試みであることは評価できますが、上手くいったかといえば微妙です。

 

 ただ、第9話までは非常に面白かったので、この作品自体は好きです。魅力的な登場人物と次々と現れる謎などは非常に楽しかったです。彼らが孤独から解放されて、新たな生活を送っていくというのも素敵です。所々で登場するちょっとしたジョークや、トリックアート、クララというキャラクターなども良い味を出していて、とても満足できる内容でした。

 

 総括して言えば、『別世界からのメッセージ』は非常に素敵で、ハートウォーミングなドラマでした。「素敵」という言葉がこれ以上に相応しい作品はあまりないかもしれません。そのくらい、キャラクターやストーリーが魅力的でした。最終話がいまいちだったとはいえ、全体としてはそんな印象です。

 

 たぶん、AMCで『別世界からのメッセージ』シーズン2を製作するとなれば、全く別の話になるでしょう。このドラマのテイスト自体は非常に好みだったので、シーズン2ができたら、こちらも観てみたいですね。

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