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ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン3ネタバレ感想|必要なのはパワーか人気かそれとも?

You don’t need powers. You just need to be human.

- Starlight, The Boys season 3

 

 Amazonプライムビデオの大ヒットドラマ『ザ・ボーイズ』が、さらに過激になって帰ってきました。この記事では、ネタバレあらすじと感想を書いていくとともに、さらに『ザ・ボーイズ』シーズン3が面白くなる3つのポイントを解説していきます。

 

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基本データ

  • 原題:The Boys
  • 配信:Amazonプライムビデオ
  • 配信日:2022年6月3日~7月8日
  • 話数:8
  • 原作:ガース・エニス
  • 脚本:エリック・クリプキ
  • キャスト:カール・アーバン、ジャック・クエイド、アントニー・スター、エリン・モリアーティ、福原かれん、ジェンセン・アクレス

予告編

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シーズン3あらすじ

 ヒューイは、ヴィクトリア・ニューマンが長官を務めるスーパーヒーロー管理局で働き、ブッチャーたちはこの機関に協力する形で悪しきヒーローたちを倒していた。しかし、ニューマンの正体は、他人の頭を爆発させることのできる能力者であり、ヴォート社の社長スタン・エドガーの養女だった。

 

 ホームランダーは、元ナチスだったストームフロントと付き合っていたことで世間から非難されていた。ヴォート社は、人気の高いスターライトをホームランダーとともにセブンの共同リーダーに任命する。このことに我慢できないホームランダーは、自分こそが正義であるのにヴォート社のせいで自由が制限されていると発言してしまったが、その直後から白人男性たちからの支持率が急増した。

 

 ヒーローのオーディション番組では、スターライトの元カレであるスーパーソニックと性的暴行で左遷されていたディープがセブンに加入することが決まった。ホームランダーは、スターライトが謀反を企てていると知り、スーパーソニックを殺す。反抗的なクイーンメイブは、収容されてしまう。

 

 ボーイズたちは、打倒ホームランダーの鍵を握るソルジャーボーイを探す。ソルジャーボーイは、かつて存在したヒーローチーム「ペイバック」のリーダーだった。彼もまた裏の顔があり、実際には正義のヒーローとは程遠く、MMの家族を殺したという因縁もあった。ロシアからニューヨークにやってきたソルジャーボーイは、ブッチャーとヒューイに協力してもらい、自分をロシア軍に売ったペイバックの元メンバーたちに復讐していく。

 

 スターライトは、ライブ配信でホームランダーの真の姿が悪であることを訴える。世間は、スターライトの告発を信じる人々と、スターライトは嘘を吐いていると考えてホームランダーを支持する人々に二分されていた。ソルジャーボーイは、ホームランダーが自分の遺伝子から作られた子供だと知る。ホームランダーは、この親子関係を知りながら隠し続けたブラックノワールを殺害する。

 

 最終話。ヴォート社でソルジャーボーイは、ホームランダーとその息子のライアンと出会う。しかし、ソルジャーボーイは、ホームランダーを見下げた奴だと切り捨て、攻撃を開始する。ライアンにまで攻撃を加えようとするソルジャーボーイにキレたブッチャーは、ホームランダーとともにソルジャーボーイと戦う。

 

 最終決戦の後、ソルジャーボーイとクイーンメイブはビルから落ちて空中爆発して死亡したと報道されたが、実際にはどちらも生きていた。クイーンメイブは隠居し、ソルジャーボーイは眠らされて政府か軍によって管理され、スターライトはボーイズのメンバーになる。ヴィクトリア・ニューマンは、殺害された副大統領候補の代わりとして選挙に出馬していた。

 

↓『ザ・ボーイズ』の原作コミックはすでに完結しており、全6巻の邦訳版がG-NOVELSから刊行されています。

 

シーズン3解説

BLM

 コンパウンドV中毒のせいで走れなくなり、ヒーローとしての方向性を完全に見失っていたAトレインは、実の兄からある話を聞きます。白人ヒーローのブルーホークが無防備な一般の黒人を殺害したというのです。

 

 これは、2020年5月に白人警官の不当な暴力によって黒人男性のジョージ・フロイドが死亡した事件を反映したものです。この事件以降、黒人に対する理不尽な暴力の廃絶を訴えるBLM(ブラック・ライブズ・マター)運動が盛んになりました。

 

 一方で、BLMに対抗するような形で、黒人だけでなくどんな人種の命も大切だとするオール・ライブズ・マターや、警官の命も大切だとするブルー・ライブズ・マターという主張も一部の白人たちから出てきました。彼らは、どうしても人種差別問題に向き合いたくないようです。

 

 『ザ・ボーイズ』の世界でも、同様の事件の後にBLM運動が巻き起こります。最初はこの件に口を出すのを躊躇っていたAトレインも、やがて真剣に取り組むようになります。Aトレインの要求に応えて、ヴォート社は黒人たちの集会でブルーホークが謝罪する機会を作ります。問題の根本的な解決ではなく、うわべだけの謝罪でイメージを回復させようとするのは、いかにもヴォート社のやりそうなことです。

 

 この集会で、しかしながら、ブルーホークは堪忍袋の緒を切ってしまいます。しまいには、スープス・ライブ・マター(Supe's Live Matter)と言い、特殊能力者の命も大切だと叫び出します。こちらが呆れ返っている時間もないまま、ブルーホークは会場にいたAトレインの兄に大怪我をさせてしまいます。あ~~あ。まったく、もう……。

 

 後に、ブルーホークはAトレインによって道路を引きずられて死亡します。このドラマでは散々とんでもないものを見てきましたが、ブルーホークの血みどろの引きずり死体は意外とグロくてこたえました。

 

有害な男らしさ

 ヒューイは、いつもスターライトに助けられてばかりで、男として情けないと感じていました。時効性のコンパウンドVを注射したところ、普段の自分とは異なり、強靭な男になることができたので、ヒューイはなんだか気分が良くなっています。

 

 これを使えば、ついに自分がスターライトを助けることができるじゃないか! そう考えたヒューイは、ヒーローガズムのときに、瞬間移動能力を使ってスターライトを避難させています。しかし、スターライトは激怒。ヒューイよりも圧倒的に強い力を持つ自分が、わざわざ助けられる必要などないのだと言います。

 

 ヒューイは、いわゆる有害な男らしさの問題に陥っています。有害な男らしさとは、toxic masculinityの訳語で、他者および自分に対して悪影響を及ぼす「男ならこうあるべきだ」という考え方のことを言います。今回の場合は「彼氏ならば彼女を助けるべきで、女性に助けられるのは情けないことだ」という思考がこれにあたります。

 

 スターライトは、ヒューイに助けられる必要もないほど十分に強く、むしろ彼の英雄的行動は邪魔になることすらあります。ヒューイがアニー(スターライト)のことを本気で想っているなら、彼が取るべき最良の行動は、スターライトが十分な力を発揮できるようにサポートすることです。

 

 最終話のヴォート社での戦いで、ヒューイはスターライトが劣勢になっているのを見つけて、自ら時効性コンパウンドVを打って瞬間移動して助けに行こうかと考えます。しかし、おそらくあと1回コンパウンドVを使ったら、ヒューイは死にます。それは、アニーからも絶対にやめてほしいと言われていたことでした。そこで、ヒューイは、スターライトの力を増強させるために、部屋の電力を思いっきり上げます。これこそが、ヒューイの取るべき行動だったのです。

 

ブラックノワール

 これまでの2シーズンでは、ブラックノワールの真の姿は、ナッツアレルギーであること以外は全く謎に包まれていました。それが、シーズン3に入って明かされていきます。

 

 彼は、元ペイバックのメンバーでしたが、リーダーのソルジャーボーイからは決して好かれてはいませんでした。また、黒人が人気が出ることはないだろうとヴォート社によって判断され、マスクを付けての活動を余儀なくされていました。

 

 ブラックノワールは、仲間とともにソルジャーボーイを裏切り、ロシアに売る決意をします。しかし、そのときの戦いで顔を激しく損傷し、マスクを脱いで活動することは困難になってしまいました。

 

 その後もブラックノワールは一線で活動を続けています。スピンオフアニメ『ザ・ボーイズ:ダイアボリカル』の第8話では、ホームランダーがヒーローになったばかりの頃に、ブラックノワールが師匠のような存在として偽善ヒーローになる術を教えていたこと明らかになりました。

 

 そんな背景があるので、ホームランダーはブラックノワールのことを人一倍信用していました。ソルジャーボーイがニューヨークにやってきたとき、ブラックノワールは身の危険を感じて逃げ出していましたが、過去のトラウマに立ち向かうためにヴォート社に帰ってきて、ホームランダーとともにソルジャーボーイを倒そうと提案します。

 

 しかし、自分がソルジャーボーイの息子であることを知ったホームランダーは、その事実を知りながら隠し続けたブラックノワールに激怒し、はらわたを引きちぎってしまいました。

 

 こうやってブラックノワールのヒーロー人生を振り返ってみると複雑な気持ちになります。彼自身はそこそこまともなヒーローであり、様々な苦難を経験してきました。一方で、ホームランダーを偽善ヒーローに育て上げたのも彼でした。結局、自分が作り上げた怪物に命を奪われたことになります。因果かな。

 

 

シーズン3感想

 Amazon Original作品の中でも絶大な人気を誇る『ザ・ボーイズ』は、シーズン3でさらに過激になって帰ってきました。第1話からチンチン大爆破。第4話ではディルドを武器に戦い、第6話「ヒーローガズム」ではスーパーヒーローたちの大乱交が描かれています。もうなんでもやり放題だ!

 

 そんな見た目の派手さもさることながら、これまで通り社会風刺やブラックジョークも健在です。BLM運動や有害な男らしさといった新たな社会問題をどんどんストーリーに取り込んでいます。鋭い社会批評性と巧みなストーリーがあるからこそ、このドラマは過激な描写のオンパレードにも関わらず、幅広い人気を得られているのだと思います。

 

 スターライトが、自分の人気を活かした戦略を取るのも『ザ・ボーイズ』らしいところ。スーパーパワーではなく世間からの人気こそが大事であり、そのことが露骨にセブンの中の力関係に反映されています。序盤では、ホームランダーの支持率が急激に下がっていたので、彼自身のパワーも不調でした。こういうのは『ザ・ボーイズ』でしか見られないから面白い。

 

 ボーイズの中では、キミコの活躍が際立っていました。ディルドで戦っていたのも彼女でしたし、病院ではミュージカルまで披露しています。「誰かの部下としてしか生きていけないんだ」と嘆くフレンチ―をなだめ、励まし続けていたのもキミコです。シーズン3のMVPを決めるなら、それは確実にキミコでしょう。

 

 ところで、ふと振り返ってみると、このシーズンの最初と最後ではほとんど何も状況が変わっていないことに気づきます。今シーズン最大の味方または敵であったソルジャーボーイは、最初と同じく最後もまたどこかに収容されています。ホームランダーとボーイズの一行は、今も元気です。一度能力を失ったキミコですが、その後、再び能力を取り戻しています。ヴィクトリア・ニューマンは、相変わらず政治方面で力を増しています。新たに登場したペイバックの元メンバーたちやスーパーソニックは、全員死亡してしまいました。

 

 シーズン3では、話が進んでいるようで実際にはほとんど進んでいません。長期シリーズ化を目指しているからでしょうか。そのせいでちょっとした無理も生じてきています。このドラマでは、様々な人が盛大に死んでいくにも関わらず、ボーイズのメンバーとホームランダーは、どんなに危機的な状況に置かれたり大怪我をしたりしても死ぬことはありません。

 

 そのため、明らかに死ぬ奴らと明らかに死なない奴らにキャラクターが二分されてしまい、戦っていても結果がわかってしまいます。戦闘シーン自体は見応えがあるものの、物語としてのスリルがないので、今一つ気持ちがノッてきませんでした。

 

 社会風刺ドラマ、ブラックコメディドラマとしては『ザ・ボーイズ』はもの凄く面白いです。これほど面白いものはありません。ただし、ヒーロードラマとしては、徐々に典型的なストーリー、すなわち毎回お馴染みの主人公と悪役が対決する、という構図になりつつあります。それはできれば避けてほしい。シーズン4では、さらにメインストーリーでも攻めた展開をやってくれることを期待しています。

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