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Netflixドラマ『ビリオンダラー・コード』感想|誰も知らなかったグーグルアースの裏の歴史

 誰もが一度は使ったことがあるGoogle Earth(グーグルアース)。その知られざる背景を描いたのがNetflixのドラマ『ビリオンダラー・コード』です。実は、グーグルアース以前にも全く同様の地理システムがありました。このドラマには、Googleで検索しても絶対に知ることができない人々の情熱が描かれています。

 

 

基本データ

  • 原題:The Billion Dollar Code
  • 配信:Netflix
  • 配信日:2021年10月7日
  • 話数:4
  • あらすじ:ドイツの企業ART+COMが開発した全地球地理システムTerravision(テラビジョン)の開発と、その特許を侵害した疑いのあるグーグルアースとの裁判を描く。

予告編

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感想(ネタバレ)

 ドラマ『ビリオンダラー・コード』は、グーグルアースの原型となったとされるART+COM社のTerravision(テラビジョン)の開発と訴訟を巡る話です。ART+COMという社名の通り、そもそもテラビジョンはデジタルアート作品として始まったものでした。作品の完成のために、ハッカーの地下集団みたいな人たちも出てきて、なんだかワクワクしてきます。

 

 テラビジョンの完成までには一筋縄とは行かず、様々な困難がありました。第1話の最後には、京都の博覧会で見事に試作品を披露します。通りかかった日本人が初めてテラビジョンを体験して驚いているのが印象的でした。

 

 その後も苦労はありましたが、ドットコム・バブルの後押しもあり、プロジェクトはどんどん進んでいきます。しかし、憧れのIT長者であるブライアン・アンダーソンに出会ったことが運の尽きでした。テレビジョンの仕組みを興奮して話してしまったために、盗用され、数年後にグーグルアースが誕生します。

 

 シリコンバレーでは、とにかく独自のアイデアのある人が勝ちですから、盗用うんぬんを巡る訴訟やトラブルはたくさん起こっています。現代のシリコンバレーの起業家たちはそのことを十分知っていますが、テラビジョンに関しては時代が違います。

 

 当時のシリコンバレーでは、盗用トラブルが多いことはよく知られていなかったのではないでしょうか。そもそも、シリコンバレーがIT産業の聖地となることすらわかっていなかったかもしれません。ドイツの人たちにとってはなおさらです。テラビジョンのアイデアが盗まれたのは、ユーリーの不注意だったと言ってしまえばそうなのですが、それにしても気の毒です。

 

 最終話では、2014年の特許裁判が描かれます。グーグルとART+COMの正面対決の場でしたが、ドイツ人のカルステンとユーリーにとってはアウェーでの戦いであり、苦戦を強いられます。そんな逆境の中、ブライアンが「テラビジョンなしではグーグルアースはなかった」と証言したことにより勝訴! ヤッター! というのは幻想で、実際には完敗しました。残酷。

 

 このドラマの内容は大まかには事実に則っていますが、少なからず脚色されています。事実を知りたいと思ってググった人もいるかもしれませんが、それは意味がありません。グーグルに対する訴訟のことをグーグルで検索しないでください。ほとんど結果が出てきません。

 

 Netflixでは、『ビリオンダラー・コード:制作の裏側』というタイトルで、実際のART+COMの関係者へのインタビューが配信されています。こちらも必見。抑えきれないグーグルへの怒りがにじみ出る瞬間にハッとさせられます。

 

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↑ドラマのオープニングで使われている曲はウクライナのエレクトリック・デュオARTBATによるAtlas。クールで耳に残るサウンドだ。

 

シリコンバレーの失敗

 ドラマにしてもこのインタビューにしてもART+COMの視点からの話なので、内容をそのまま鵜呑みにするわけにはいきませが、一抹の真実はあると思います。グーグルアースがテラビジョンを丸パクリしかたどうかは微妙でも、多少の特許侵害をしている可能性は十分あるんじゃないでしょうか。裁判も、アメリカで行われた裁判ですから、アメリカの企業に有利だったとしても全く驚きません。

 

 実は、自分がこのドラマを観たのは、もう半年くらい前なのですが、今さらながら感想を書き残しておきました。というのも、今でもはっきり内容を覚えているくらい面白かったですし、同時に2022年の海外ドラマの一つの潮流がここでもすでに見られるからです。

 

 2022年の上半期には、シリコンバレーで大きな失敗をした企業の実話を描くドラマが相次いで公開されました。巨大な詐欺を行っていた医療ベンチャー企業のセラノスを描いた『ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女』(Disney+で配信中)、コンプライアンスに関して多くの問題を抱える新興企業ウーバーを描いた『Super Pumped: The Battle for Uber』(U-NEXTで配信予定)、同様の問題を起こした企業WeWorkを描いた『WeCrashed』(Apple TV+で配信中)の3作品です。

 

 グーグルはすでに大きな成功を収めたシリコンバレーの企業ですが、そんな企業であっても知られたくない歴史があったのです。今さらグーグル帝国が崩壊するとは考えられませんが、場合によってはテラビジョンとのトラブルなどで失敗していたかもしれません。

 

 現実世界では、2022年に入ってからメタ(旧フェイスブック)とネットフリックスというシリコンバレーの大企業が相次いで株価を急落させています。どうもシリコンバレーの危うさを感じずにはいられません。こういった背景を知った上で『ビリオンダラー・コード』及び先ほど挙げた3作品を観てみると、より一層考えるところがあるのではないでしょうか。

 

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