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英国ドラマ『主任警部アラン・バンクス』シーズン1~正義は悪から救えるか~

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  ミステリードラマなら、イギリス!ということで、今回は『主任警部アラン・バンクス』シーズン1の解説&感想です。英国ミステリードラマのファンの方なら、絶対にハマるであろう作品です!

 

 

 

 

『主任警部アラン・バンクス』シーズン1基本データ

・原題:DCI Banks

・放送局:ITV

・放送年:2011年

・話数:8(ただし、いずれのエピソードも前後編であるため、2話で1話として編集されている場合もあります。この記事では全4話として扱います。)

・一話あたりの長さ:45分

・原作者:ピーター・ロビンスン

・あらすじ:

 ヨークシャー警察の主任警部アラン・バンクスは、正義感が強く、部下からの信頼も厚い人物だ。第1話では、アラン・バンクスのチームは少女連続失踪事件に挑む。

※『主任警部アラン・バンクス』シーズン1は、現在Amazonプライム,Huluで配信中。

 

 

 

エピソード解説(ネタバレあり)

第1話「地下室の悪夢」

 アラン・バンクスは、少女連続殺人事件に挑む。最初から妻は怪しかったので、それ自体は驚きではない。ただ、その妻の過去や、そこから今回の犯罪に至った心理的な経緯は衝撃的。また、事件発生時に駆け付けた女性警官のストーリーも興味深い。少女を5人も殺し、目の前で同僚を殺した人間に対して、手を上げることは罪なのだろうか。法律的には過剰防衛として裁かれるのかもしれないが、果たしてその場にいて、その男を放っておける人間がいるだろうか?

 

 2つのストーリーを通して、悪と正義の本質に迫る構図は非常に見応えがある。悪を受け続けた人間は、正義によって裁かれることができるのか。絶対的な悪に対して行った悪は、裁かれるべきものなのか。複雑な感情を残すエピソードでした。

 

第2話「危険な火遊び」

 ボートの火事により、古本屋の男と女子大生が焼死体で見つかった。アラン・バンクスのチームは、男が絡んでいた贋作事件と女子大生の家族の線をそれぞれ追っていく。中盤で明らかになるのですが、当初、女性の頭の傷は殴打によるものだと思われていたのですが、実際には火事によって血が沸騰し、そのせいで頭蓋骨内の圧力が上がり破裂したものでした。この説明はほとんど言葉だけだったのですが、これほどおぞましいものは想像したことがなかったです。

 

 殺人事件の方は、アニーと寝た男が実はなかなかのサイコパスだったということで決着が付きます。でも、最後まで捕まってはいません。一方で、女子大生の家族の件は意外な結末を迎えます。終始おかしな挙動を見せていた妻が、実は今の夫から児童虐待を受けていたことがわかります。ちなみに、第1話でも幼い時に虐待を受けていた妻が登場していました。何か全体のテーマがあったりするのか、あるいはただのネタ被りか。

 

第3話「背中合わせの悪魔」

 第1話の事件で少女連続強姦殺人事件のほう助をしていたルーシー・ペインが車いす姿で殺されます。一方で、路上でのレイプ殺人も発生。前者の方の犯人が検視官だということは視聴者にはわかっているので、彼女の動機やどうやってこの状況を切り抜けるかが見どころとなります。後者の事件は、バンクスらの捜査を観ていけば犯人がわかり、我々が推理をしても当てられるような類のものではありません。

 

 捜査関係者が法の手を逃れた犯罪者を裁くという設定を聞くと、自分はどうしても『デクスター』を思い浮かべちゃいます。ただ、こっちのエピソードでは検視官自身が実際に被害者なので、その点で彼女の動機はより強力なものになっています。だからといって、そのような行為が許されるかと言えば、バンクス曰く違います。復讐によって正義を果たそうとした女性と、法でもって犯人を捕まえ罰しようとした警察官の対比により、バンクスの主張がより印象付けられています。

 

第4話「報復の行方」

 現金を運んでいた車が強奪されたが、その犯人も殺されます。一方で、バンクスは警視正からポルノを始めた娘エミリー・ライデルの居場所を突き止めてほしいと依頼されます。事件を捜査していくと、車は狂言強盗であったものの、現金も持ち主であるバリー・クラフが強盗犯を殺していたことが明らかになります。このバリー・クラフは、ロンドンでエミリーの世話をしていた男で、娘を人質のようにして警視正から警察の内部情報を得ていました。また、エミリーの義理の姉のルース・ウォーカーは、エミリーの家族を崩壊させようとしていました。

 

 少し話が複雑ですが、ちゃんと観ていけば分かる程度ではあります。狂言強盗や撲殺だと思われていたのが毒殺だったりと、様々なトリックが使われていてミステリーとしてとても面白いエピソードです。複雑な人物関係が明らかになった後に明かされる真犯人像は悲しいですね。でも、人違いだったとはいえ、コカインにストリキニーネを入れている時点でアウトか。

 

 

 

『主任警部アラン・バンクス』シーズン1感想

 個人的には、ミステリードラマなら、アメリカよりもイギリスのものの方が面白いと思っています。今回の『主任警部アラン・バンクス』は、まさにイギリスの刑事ドラマらしいものであり、観たいものが観られました。英国ドラマファンには、問答無用でおすすめする作品です。

 

 一番良いなと思ったのが、主人公のバンクスのブレない正義感です。法の手でもって、必ず悪人を捕まえてやろうという強い意思がありますよ。特に第1話では、罪を犯したことを認めても罪悪感を感じていない犯人に怒り、何としても自分が犯した罪を自覚させようとします。決して復讐や暴力といった手段は使わないけれど、誰よりも正義漢であるところがとてもカッコいいです。

 

 もう一人の主人公がアニー・カボット刑事です。美人で、負けず嫌いな性格をしていますね。バンクスに対してはツンデレなところもあって、バンクスとアニーの会話は暗くなりがちなドラマの中でも毎回少しだけ笑わせてくれます。でも、基本的にアニーはバンクスを刑事として非常に尊敬しているので、師弟関係のようなところもあります。

 

 ミステリーとして好きなのは第4話。様々なトリックが用いられているのが面白い。プロットはちょっと複雑だけれど、わからないほどではないので、このくらい頭を使う方が楽しいです。

 

 刑事ドラマとしては第1話かな。バンクスの正義を追い求める姿が強く伝わってきます。同時に、殺人犯に暴行を加えた女性警官を巡る物語も興味深く、正義と悪について鋭く問うストーリーだったと思います。

 

 全体的には、英国ミステリードラマらしく闇が深めで、刑事ではなく事件捜査を主体としたドラマになっています。英国ドラマが好きな方にとっては、ぜひとも観てほしい作品です。これが初めて観た英国ドラマだという方で、この雰囲気が気に入った方には、『主任警部アラン・バンクス』シーズン2以降だけでなく、英国刑事ドラマ全般をおすすめします。

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